• 準備していただいてる間に、自己紹介をさせていただきたいと思います。改めまして、清水建設の大山でございます。どうぞよろしくお願いします。こういう、いわゆる、どちらかというとIT系の皆さんのところに「建設会社がやって来て、何なんだ」という印象をお持ちかもしれません。

  • 私は1983年に清水建設に...建設会社に入社しました。もともとは、モデルとかIEといわれる、人間工学的なものとかをやっていたんですけども、建設会社にも、そういう人間って必要になるかもしれないみたいな、酔狂な興味で採用された人間でございます。

  • ですから、そのころは「その他の人たち」と、ずっと呼ばれておりました。建設会社では営業か、事務職か、財務、これが文系の人たち。理系は建築か、土木。僕たちは、その他の人たち。

  • ずっと、もう30年〜40年になりますが、建物の形相とか、高付加価値化をやってきたつもりです。きょうは、「最新の」っていうタイトルをつけちゃって、恥ずかしいなと思って失敗したと思ってるんですが、2年前に竣工したビルがございます。

  • このビルが...建設会社っていうのは、なかなか自分の会社の製品を、モデルを作るとか、パンフレットを作るとかいうことはできない会社なので、自分の会社を作るときっていうのが、一世一代のビッグチャンスなんですね。今回は、2年前なんですけど、ちょうど3.11を前後して、仕様を変更したり大騒ぎをしましたが、ICTてんこ盛りのビルを造りました。きょうは、そのビルをご紹介させていただくと同時に、これから、ビジネスヒントという意味では、建物でも、こんなことをやってるんだったら、実はもっと、こんなこともできるんじゃねえかみたいなお話という...ぜひ、ネタを皆さんからは頂戴したいと思っております。

  • 例えば、Iotであるとか、BYODであるとか、クラウドであるとか、いろんな話が、意外と建設会社も、そのヘビーユーザーになろうとしてるというところをご理解いただければと思います。

  • では座って、お話させていただきます。というわけで、特にですね、非常に、今、建物はエネルギーを使わないということ、それから、3.11を受けて、強じんであるということも求められています、そのために造ったビルをご紹介したいと思います。簡単には建物の概要から、いろんなシステムをご紹介したいと思います。すいません、これからあとは、あまりきれいなご婦人の写真とか全く出てこない、土建屋らしいプレゼンになってしまいますが、ご容赦ください。

  • まず建物です。京橋にございます。おおよそ5万平米ぐらいの、4000人ぐらいの人間が働いているビルでございます。大体、オフィスビルって、延べで言うと10平米に一人ぐらいの感じが普通のビルで、20平米に1人ぐらいになると、ずいぶんリッチなICT系の会社なんだなぁみたいな、そんな評価を、われわれしたりします。そういう意味では、5万平米で4000人ぐらいの会社って、普通の会社です。オフィスやカフェや、それから、いまだに食堂なんかを持ってたりする、非常にレガシーな生活スタイルを持ったままの会社ではあります。

  • そうはいっても、今回3.11のこともありまして、まず、災害に対してタフであること、強じんであること。それは災害が起きた瞬間にもタフであること、それから、そのあともタフであることっていうことが求められます。さらに、平常時では、快適ではあるけれども、むだなお金は使わない、むだなエネルギーを使わないというビルが求められるというわけでございます。それを清水建設では「eco&BCP」なんていう言い方をしています。

  • まず、ecoは何をやっているか。このビルは、普通の建物の約30%のエネルギーで運用しているビルです。ですから、普通の建物の3分の1ぐらいのエネルギーで動いています。それはまず、設計でいろんな工夫をする。例えば、熱がこもらないようにするとか、それから換気がよくできるようにする。逆に熱が逃げないようにする、いろんな工夫で50%ぐらい。

  • それから、いろんな機器の選定。高効率の機械を、ちょっと高いかもしれないけど、高効率の機械を買う。そういうところで62%。最後の8%は運用です。この運用が、きょう、ご紹介なんですけども、私は、このビルの制御システムを作る事業部にいるので、このビルに最先端のやれるかぎりの制御をぶちこんだというわけです。

  • それでなんとか8%、さらなる省エネを実現したというわけでございます。ちなみに、これ70%で、残りあと30%あるじゃん、どうするの?って。これは今のところ、カーボンオフセット、いわゆる排出権を買って、ゼロにしようと考えています。

  • いろんな技術を使ってます。これについては、配布の資料もついていると思うので、ご覧になってください。

  • 制御的には、ここでタスク&アンビエント、空調や照明、両方で出てきます。ここで言っているのは、タスク領域。要するに仕事をするとか、ワークをする領域では必要なエネルギーを供給するけれど、アンビエント、いわゆる周辺環境領域、ここではエネルギーをほとんど供給しないという考え方です。ですから、人がいるところは空調もくる、照明もつける。けれど、人がいないところは、空調も供給しない、照明もつけない、それを徹底させてます。

  • なるべく単一機能のものをつけていくと、どんどん、どんどん重装備になってしまうので、いろんなものをマルチに使うようにしてます。例えば、窓に太陽光を貼り付けて、それをシェード、ひさしの代わりにするとか。それから、外壁そのものが柱であったり、耐震壁であったりとか、マルチな使い方をして、なるべく物は減らす、そんなビルになっています。

  • ここで、「スマートBEMS」って呼んでいる、エネルギーの制御と設備制御をするコンピューターを入れました。これは何をやるかっていうと、当然、照明や空調の制御をやるというのは、皆さん、ご想像のとおりです。それから、ちょっとユニークなところでは、パソコン。こういったパソコンも、今、自動でスクリーンセーバーが動いたり、それから、オペレーションがないと自動にシャットダウンすると思うんですが、ビルの都合で、それを、また制御しようというのをやっています。これはあとで、紹介します。

  • それから、マイクログリッド制御では、このビルは大きな電池を持ってます。この電池でピークの電力を相殺させる。そんなこともやっています。それから、この辺からが、ぜひ皆さんからもネタをいただきたいところなんですが。会議室の予約をしたら、その予約データをビルの環境制御装置にぶち込んで、その会議室の予約のあった部屋だけ余熱をする、あらかじめ冷やしてあげるとかいうことをやります。

  • ただし予約のない部屋は、暑くなってもほったらかし。どうせ誰も来ないんだから、いいじゃねえかっていう考え方です。しかもそれで、あとで厳しいんですけど、15分たっても来なかったら、これは空予約というふうに見なして、照明も空調も切っちゃいます。また、新しい予約がきたら、照明も入れて、空調も入れてあげる。そんなことをやります。そんな遠隔もしながら、2つ目では、このビルはセンサーがついてまして、1つは照度センサー。日の光が十分入っているんだったら、照明をつけなくていいよねっていうことで、照度センサーで調整します。

  • それから、さっき申し上げたように、人がいないんだったら、照明いらないよねっていうことで、人感センサーもつけています。ですから、明るければ、よけいなことしない。人がいないなら、よけいなことをしない。使う予定もないんだったら、よけいなことをしない。こういうことで切りまくっている。なにしろ、いらないところは絞るっていうことをやっています。最後はセキュリティーで、最終退出の人が出てロックをかけるっていうことをやりますよね。これがあったら確実に誰もいないから、このときも切る。ということで、うっとうしいほど照明を切るビルです。本当に人のいるところしかエネルギーを持っていかない。

  • 結果、建物の環境評価は2種類あるんですけど、CASBEEっていうやつですと、日本では過去最高の9.7という数字をもらいました。LEEDっていうのは、これも国際的な省エネルギーの基準なんですけども、ゴールドもらいました。実は、LEEDは、一番いいのはプラチナで、ゴールドは一番ではないです。まだ、プラチナを取るまでには至っていない。まだまだ、やることはありそうだというわけでございます。

  • あと、BCPのほうで何やっているか。このBCPのほうでも、この建物はかなりタフです。免震建物なんですけれども、まずビルベースでは、何かあったら建物自体をちゃんと持たせようと。そのために免震をやります。

  • それから、72時間はサービスを提供しよう。そのために灯油、燃料であるとか、食事、トイレ用のいろんな機器。さらには地域の方も収容して、安全確保して差し上げようっていう考え方です。

  • そのために、屋上にまず受変電を置きまして、それから発電機も屋上にあります。実は、発電機とかって重たいので、下のほうに置きたかったんですけど、3.11で、結局、あんまり地面近くに、こういうインフラを置いておくと、なんの使い価値もなくなってしまうっていうことに気がつきまして、急きょ屋上に全部ぶち込んでおります。それから、防災備蓄倉庫。

  • さっき、「4階が食堂です」って申し上げたんですが、実は4階で震災対策本部が置かれます。清水建設、今この瞬間、600か所ぐらいで工事現場があります。それから、首都圏だけで1万4000だか、5000の清水建設で建てたビルを使ってくださっているお客さんがいる。何か震災があったら、その600の現場に散らばっている約1万人の社員。協力業者さんの安全の確認。首都圏だけでも1万5000。たぶん、全国でいうと、ひょっとすると、もっと桁が上がっちゃうと思うけど、そのお客様へのサポートをしなきゃいかん。

  • ちょっと、いやらしい話をすると、ここで頑張ってサポートすると、次の仕事がきっと、もらえるよねみたいな話もあって。逆に、ここでうかつなことをすると、知らない間に、大林さんが、うちのお客さんのところに行ってて、大林さんが建て替え計画を立てていたというと困っちゃうわけで。

  • そういう社会的な使命と、いやらしい根性が混ざりながらも一生懸命対策をする、そのための本部が設けられています。構造的には、この免震装置とか、いろんな機材がありますけど、ちょっとこの辺から。1つは、緊急地震速報でエレベーターを止めたり、プラント止めたりっていう、安全回避行動を取ります。

  • それから、地震被災度判定支援システム。これもおもしろいんですけども。加速度センサーを建物の中に方々置きまして、加速度センサーのデータから、もう一回、地震をシミュレーションして、どのくらい建物が損傷を受けたかというのを推定して、表示するシステムです。これは最近、ほかの会社さんでも好評なんですけど、被災したあとに、建物をそのまま使っていいのか、逃げたほうがいいのかという判断をしたい、そういうシステムです。

  • 「そんなの清水さん来てくれるまで判断つかないよ」って言われちゃうと、「そんなの正直言って行けません」っていうのが本音ですので、こんなもので判断をしていただこうっていうわけです。さらに、マイクログリット。基本的には先ほど、ご覧いただいた非常用の発電機、停電が起きたら、非常用の発電機で50%電源供給します。72時間。

  • もし燃料供給がなかったら、あのビルの2階と3階は近隣の方を収容します。それから、4階は震災対策本部でお客様対応します。この3つのフロアに対しては、蓄電池と太陽光を上手に運用することで、半永久的に電力供給をしようと。ここで籠城をする覚悟であります。想像していただくと、東京が大震災を受けて72時間、京橋のビルに灯油がこなくなる、燃料がこなくなる。

  • この状態で、このビルの中にいて、一体何をするんだろうって、よく考えると怖くなるんですけども。そこまでやる所存でございます。そのために、実は一番大事なのは通信で、この建物の場合は、2つおもしろい工夫をしました。

  • 1つは、IP統合ということで。これまで電話とかプリンタとか、OA機器のネットワーク、それからビルの管理とか、セキュリティーのネットワークって別々になっていまして、ほとんど、皆さんのビルはスパゲッティのようです。パイプシャフトってあるんですけども。パイプシャフトに、LANケーブルだけで4種類とか5種類の色がついたケーブルが回ってて、それにかつ電力線が回ってて、訳が分かんない状態になってます。

  • それを今回は、ほとんど今、IP化が進んでいるので、全部統合しました。ただ、1か所感染されたら、全部いっちゃうじゃんっていう話がありまして、それは全くそのとおりであります。そのために、かなり硬いシェルっていうか、言ってみれば、建物全体をDMZするぐらいの、外に対しての口の管理をやっています。

  • でも、おかげで、特に今ネットワークで事故が起きていません。震災対策本部ですね。ここは先ほど申し上げましたように、4階で、いろんな通信が必要なってきます。1つは有線、携帯電話、衛星、防災無線、MCA、こういったものを駆使します。

  • ところが、平常時、普通の電話なんですけど、パンパンになってだめじゃないかと。輻輳(ふくそう)しちゃうと思いますけれども、普通はPBXから各フロアに、各部署部署で、外線電話を持っています。これを全部、震災対策本部に手動で切り替えるようなことをやっています。こんなコンセントで、外線を振り分けるというわけです。

  • それから衛星電話。これは一番使えると思います。実は、衛星電話も2通りありまして、待機補償する衛星電話と、普通の電話と同じように待機補償をしない電話があります。待機保障しない衛星電話は、実は輻輳しています。

  • 携帯電話よりは使いにくくなりにくいですけど、衛星電話も回線がパンパンになってしまう。とすると、われわれのような会社だと、ちょっと高額でも、しっかりした衛星通信ほしいねって。ただ、これが4階でも使えなきゃいけないので、衛星アンテナ用のケーブルを4階まで一応引いております。こんな仕組み。

  • それから、防災無線も同じです。ちょっと失敗しちゃったのがですね、このビルの管理中枢は地下1階にあります、防災センター。そこで、すべての情報、セキュリティーもビルの管理も、すべての情報を集約して、先ほどのような連携制御をかけています。ところが、3.11のあと、実はここでも10cmぐらいなんですけど、冠水するということが分かりまして、それは例の荒川とか、利根川の堤防が決壊したときに冠水する。

  • 冠水すると、例え10cmであっても、水が流れ込んでしまうので、防災センターは機能しないということで、急きょサーバールーム、業務用のサーバールームを大きくしまして、ビル管理用のサーバーとか、全部上のほうのサーバールームに集約させました。もし、地下1階の防災センターが水没してしまったら、それを放棄します。放棄して、4階の食堂に行って、4階の食堂のLANからPCをつないで、ビル管理のサーバーに接続して、ビルの運用を継続するという形にしました。

  • これは「僕って頭いいでしょ」みたいな感じだったんですけど、ひとつ大失敗をしまして。ビル管理のネットワークが、あるEPSっていう、パイプシャフトの扉を開けると、ビル回路のネットワークにつながる口があるんですけど、そこに予備のパソコン置いておいて、そこのパソコン使えばいいですよみたいなかたちにしたんですけど。

  • 私、家具を用意しておくのを忘れましてね。今、床にコンピューターを置いて、このビルの制御をしている。これがエマージェンシーの姿で。「やっぱり大山さんは、そんなに詰めのできる人ではないな」という嫌みを言われました。今、このEPSには、折り畳みのいすが1個入っているはずです。結局こういうことをやって、これも統合ネットワークならではのやり方で、極端なことをいうと、ほかのところでもビル管理ができる。そういうことを試行しています。

  • ということで、今、BCPの話とかecoの話をしましたけれども、まず、震災の話でいうと、震災時に何をしようかっていうこと、その準備をどうしようか。あと、実はものすごく大事なのは、非常事態を解除するのって、どういうタイミングで解除しようかみたいな話があるので、ぜひこれは、それぞれ皆さん、自宅でもお考えいただければなと思います。

  • ちょっと非常に駆け足にお話をしてまいりましたが、意外と建物って、今、ICTを使ってます。今、私の一番大きなテーマは、例えばワイヤレスデバイスが、センサーも安くなってきたので、先ほどから一生懸命、照明のスイッチをいじっていただいていますけれども、照明のスイッチを壁につけるのはやめようよっていう議論があります。

  • 手元のコンピューターで使える。それから、テレビの宣伝で木村拓哉が「窓を開けて」って言うと、スマホに話しかけると制御ができる。これはもう、現実にやってます。そういったデバイスが、どうやって建物の形を変えていくかとか、皆さんの生活のしかたを変えていくかっていうのを、今、一生懸命考えてるところです。

  • 喫緊では、そういう壁のスイッチを全部やめよう。「何々をするところ」という定義を、どんどんやめていこうっていうのが、ひとつの課題です。その次は、きょうも冒頭でお話がありましたけれども、この膨大なデータをどうやって使おうかっていう、AI的な話題があります。建物の使い方をモニタリングしながら、そのデータを解析して、さらに、もっといいデータ、建物を設計していくとか、運用システムを作るみたいな話が、われわれサイドの中ではあるんですけど、お客様とか建物ユーザーに対しては、何が返せるかっていうのも、これから考えていかなきゃいけないと思っています。

  • それから、3つ目はロボットの話が出ましたが、まさにで。建物の中で、ロボットとか、ドローンを飛ばすって意外と難しいです。特にドローンが難しいのは、ドローンは、外で飛んでるとGPSで座標が取れるんですね。

  • なので、意外と自分の居場所がちゃんと分かってくれるんですけど、建物の中では今、GPSが効かないので、それに代替するものが、いろいろ、ビーコンであるとか用意されています。

  • 今、動くロボットのほうとか、ドローンが自分で情報処理を、それこそ、レーダーで電波を飛ばしながら自分の位置を捕捉して、動き回るようにするのがいいのか、建物サイドのほうが、そいつの動きを把握して、そいつにリアルタイムで、居場所を教えてあげるのがいいのか。今、その両方を実は検討しています。自分も、ちょっと55過ぎたので、ひょっとすると、ドローンが建物の中を飛ぶのは、僕は間に合わないと思っているんですけど。

  • そんなことをしながら、いわゆる建物の中での単純な仕事であるとか、ある意味、経験則的な制御のところというのは、コンピューターにやらせる。そんなことが、引き続き起こっていくんだと思っています。以上、非常に駆け足でありましたが、最近の建物のご紹介をさせていただきました。どうもありがとうございます。