• よろしくお願いいたします。朝日新聞の平と申します。こちら、お邪魔するのは初めてなんですけれども。皆さんは大体あれなんでしょうか。メディア業界でお仕事をしたいなと思っていらっしゃる方が多いんですか?メディア業界で将来、広告とか新聞、テレビ、出版含めてメディア業界で仕事をしたいなと思っていらっしゃる方は、どれぐらいいらっしゃるんですか?

  • ほぼ、ほぼ...。その中で毎日新聞を読んでらっしゃるって方どれぐらいいらっしゃいますか?マジっすか...。頑張ります。そういう逆境の中で頑張っている業界の新聞社にイノベーションはあるのかというお話を、今日はさせていただきたいと思います。

  • 1986年にこの業界に入ったので、ちょうど30年新聞記者やっています。社会部とか、シリコンバレーに行ったりとかして、今はこの20年ぐらいは主に、インターネット周りのことを継続的に取材をしております。

  • 最近でいうと、こんな...。これはケヴィン・ケリーさんという、雑誌で日本版でもありますけど「WIRED」ってITカルチャーの雑誌があって、それの初代編集長のケヴィン・ケリーさんという方のインタビューをして。これ、あとでもお話出ますけど、AIが今後普及してくるって、例えば30年後の社会ってどうなるのかっていうお話を聞いた記事です。

  • これは、後ろにいるのは慶應の村井純さん。日本のインターネットの父という人です。周りにいるのが、アメリカのMITメディアラボの所長をやっている伊藤穣一さんという方。伊藤さんは、今はフィンテックに結構力を入れていらっしゃるので、そんなお話を書いたコラムだったりします。

  • 今日の講座はメディア・イノベーション講座ということなんですけれど、メディア・イノベーションの本というのを昔仲間と一緒に出したことがありまして。「メディア・イノベーションの衝撃」という。まさに、この講座的な話をずっと追っかけています、という話です。こんな本も出しています。ビジネス書ですね。こんなのも出しています。

  • 新聞社がどんなイノベーションをやっていて、その背景にはどういうメディア関係の事情があるのかというようなことを、今日はかいつまんでお話ししたいと思います。イノベーションが起きる前の昔の新聞社、こんな感じですね。これ1942年のニューヨーク・タイムズです。イノベーションなさそうですよね。

  • 私が入った30年前の日本の新聞社というのもほぼこんな感じで。今では考えられないですけれども、机の上には灰皿が置いてあって、しかしその灰皿も使わないで床でたばこを消したりとか、非常に不衛生な環境でありました。使うツールというのも、こういうタイプライターとかそんなものを使っていました。

  • 私が入った当初というと1988年ですけれども、こんな調査報道なんかのお手伝いとかをしていました。皆さんほとんどご存じないと思いますけど、リクルート事件という調査報道の中では割と業界の人は知っている事件なんですが。この事件があって、翌年に当時の内閣が総辞職するという結末になっています。

  • この当時、私が使っていたツールってどういうものかっていうと、こんな原稿用紙です。こういう原稿用紙に鉛筆やサインペンで手書きで原稿を書いて、それを専門のパンチャーさんという人がコンピューターに入力する作業をしていたというのが、この当時、私が入社した当時です。そこに、こんなでかい機械ですけど、これワープロです。ワープロしか使えない機械なんですけど、こんなでっかいのが入ってきて、手書きからワープロを使うようになった、そんな時代です。

  • これ携帯電話です。弁当箱みたいに非常に重いものだったんですけれども。例えば災害の現場なんかで当時は普通に携帯電話とか持ち歩けないで、こういうものを担いで行って、災害現場から電話で記事を吹き込んだりというようなことをしていました。今はもう完全に、こういうものを使って生中継をしたりですね、そういうこともやっています。こんなものも使ったりしています。

  • これ、メディア環境の変化で一番大きいのは、やっぱりインターネットが登場したということが非常に大きいです。あとでも説明しますけれども、それによって便利になった反面、ビジネスとしてのジャーナリズムというのはかなり深刻なダメージも受けています。

  • これ1969年にインターネットを初めて通した、レナード・クラインロックさんという、まだご健在なUCLAの教授ですね。これがもう1人、インターネットを作った人の中で有名なティム・バーナーズ・リーさんって、ロンドン五輪のオープニングの開会式のときにも登場していましたけれども。ワールド・ワイド・ウェブという、HTTPって、普通に今ネットを開くとページが出てくる、そのページの仕組みを作ったのがこのティム・バーナーズ・リーさん。

  • これ最初のウェブページです。1991年に、こういうワールド・ワイド・ウェブというのが出てきています。これ最初のウェブサーバーです。このころ日本では何をやっていたかというと、前回のカープの優勝がまさに25年前、1991年です。それぐらいのタイムスパンということです。

  • 朝日新聞も、これは1996年ですけど、95年からインターネットのページを立ち上げてネット配信ということもやり始めています。現在、新聞社がどんなイノベーションをやっているのかということを、いくつかご紹介したいと思います。

  • 人工知能ですね。これがなんだかわからないと思いますけど。これはワシントン・ポストがですね、この間終わったリオ五輪。オリンピックのほうで配信していたものなんですけど。これは、ワシントン・ポストのオリンピック用のツイッターのアカウントです。

  • ここに記録が出てきていると思うんですけども、これを送信しているのが人間じゃなくて人工知能、AIが自動的に送信しています。これツイッターですけれども。こっちはフェイスブックのメッセンジャーですが、これも同じAIが記録をこういう形で自動的に送信したりしています。

  • これが、そのワシントン・ポストのニュースリリースです。これはワシントン・ポスト社が独自に開発した「ヘリオグラフ(Heliograf)」っていう名前のAIなんですけれども。

  • そのAIが配信されたスポーツの記録を読み取って、それをツイートの形とか、あるいは原稿の形にして自動的にどんどんと送信をするということをこのリオ五輪から始めますと。そういうふうなリリースです。

  • これなんか全部そうですね。1位がアメリカで、2位が中国で、3位がイギリスでというような、そういうのが自動送信されています。一般的にロボット・ジャーナリズムとか言ったりします。人間じゃなくて、機械が自動的に原稿を書くというような程度の意味でロボット・ジャーナリズムと。

  • これはわりと数年前から始まっているトレンドで、いずれは日本の新聞協会賞みたいなピューリッツァー賞をロボットがとるんじゃないかということも、これは2012年の記事ですけど、そんなようなことも言われ始めています。

  • 今のはワシントン・ポストが自社製作したものなんですけれども、ほかのメディアでもかなり幅広く、このAIを使った記事の作成ということは取り組んでいます。これはAP通信というアメリカの通信社の例ですけど。

  • これがAPが配信した記事なんですが、さっきのよりも、ちょっとちゃんとした文章になっているかと思うんですが。何が書いてあるかというと、マコーミックという会社が第3四半期の業績で証券業界の見通しを上回る業績を上げましたと、そういう見出しで、そのあとに続く記事で一般的な記事なんですが、これが全て人工知能が作っている記事です。読んでみても、全然人間が書いたものか機械が書いたものか、ちょっと判別はできないくらいの、なかなかな上出来なものです。

  • これは自社製作ではなくて、オートメイテッド・インサイトという、AIの、特に文章の、AIで文章を作るということを専門にやっている業者のサービスを使ったものです。これのこっち側にデータがあってですね。例えば第1四半期の業績がいくら、売り上げがいくらで、伸び率がいくらというようなデータがあると、右側にあるように自動的に新聞記事らしく文章化して配信してくれるという、そういうサービスです。

  • ここまでくると、ほぼ人間は最後のチェックをするぐらいで、ほとんど関与はしていないようです。APは2〜3年前から始めているんですけども、どんどん対象の範囲を広げていて。今、四半期ごとの企業の業績、中間決算の記事3700社分を3か月ごとに配信しているということです。

  • で、それだけではなくて、野球の報道についてもマイナー・リーグのほうで、この人工知能を使った自動的な記事作成と配信ということを始めるという、これはニュースリリースになっています。次は仮想現実ですね。先ほど佐藤先生のお話でも多分、出ましたよね。VRとかっていうのは、恐らく広告なんかでも幅広く使われていると思うんですけれども、ジャーナリズムの世界でもVRはいろんな取り組みが始まっています。

  • これはフィナンシャル・タイムズですね。うまくいくかな...。ちょっと待ってくださいね。これもやっぱり、リオ五輪に合わせてイギリスのフィナンシャル・タイムズ、日本経済新聞社が買収した、今は子会社になっていますけども、そこが作ったVRのコンテンツです。

  • (動画を見ています)これは360度、見ることができます。今これ、パソコンなのでこういう形でしか見れませんけれども、スマホを使ってゴーグルで見るともっと完全に、何と言うか、イマーシブというか没入した形で見ることができます。

  • ジャーナリズムで、こういうバーチャルリアリティーを使うことのメリットの1つというのは、スチール写真とかあるいは文章ではどうしても伝えきれないような、街の息遣いとか、ざわざわした感じとか、自分の視点で自由に見ることができるというのが1つ大きな役割としてあります。

  • こういう裏路地のごみごみした感じとかっていうのは、なかなか新聞記事の文字情報とかだけでは、伝えきるっていうのはちょっと難しい感じですね。

  • (動画を見ています)

  • さっき、ちょっと出ていましたけれども、このようにリアルの画像にデジタルのデータを付加して説明を加えていくということも、このVRでは可能になってきます。

  • (動画を見ています)このようにバイクの後ろとかに360度撮れるカメラをつけて動くことで、自動的にこういう360度の映像も撮影できてしまう。

  • (動画を見ています)これ更に360度撮影用のカメラをドローンに載っけて撮ったりもしています。

  • こうやってドローンを使って普段なかなか立ち入れないような場所を撮影したりするのを、ドローンジャーナリズムと言ったりもしています。これがフィナンシャル・タイムズのリオ五輪のVRの事例です。

  • これはガーディアンで。これちょっと怖いんですけど。独居房の、非常に非人間的な扱いというものを、その空間の閉鎖性みたいなことを、VRで再現したという事例です。

  • (動画を見ています)

  • こういう独居房の狭さと圧迫感みたいなものを読者に体験してもらう。

  • (動画を見ています)

  • この圧迫感、極限状況の中で、自殺してしまう人もかなりいるというような。ちょっと怖かったですね。

  • (動画を見ています)これがガーディアンのVRですね。

  • これは全然、もうちょっときれいな、ウォール・ストリート・ジャーナルのVRの事例です。

  • (動画を見ています)これで撮影しているんですね。真ん中のところで。

  • この上に360度撮影用のカメラをくっつけて。特に、こういう奥行きのある空間を表現するのに非常に適している。

  • (動画を見ています)こんな感じですね。この手の動きで一番派手に動いたのは、ニューヨーク・タイムズで。

  • これはパソコン版では見られないんですけど、いくつか作品を出していて。作品を出すにあたってグーグルと提携して、この段ボール箱で作ったゴーグルを読者に配って、それでこういうVRを見てくださいというような取り組みをしています。こんな感じですね。こういう、これは難民の子どもたちをテーマにした360度のVRの作品でした。今までがVRですね。

  • もう1つの最近注目されている流れでは、データジャーナリズムという分野があります。これはいわゆるビッグデータという、すごいたくさんのデータが使えるようになってきたので、それを使ってグラフィックにいろんな動き、事象を説明していこうという、そういう取り組みです。

  • これも、リオの五輪でもいくつかありました。これは簡単にいくつか紹介するだけにとどめますが。これ非常にわかりにくいんですけど、地層みたいになっているのが、各国がオリンピックでメダルをとった数です。

  • それを歴年で表していて、一番上の水色のところがアメリカ。その下のところ、オレンジ色っぽいのが中国とか、そういう形でオリンピックの歴史の中で、各国がメダル獲得競争でどういう存在感を見せてきたかというのが、ひと目でわかるというようなデータジャーナリズムです。

  • これはワシントン・ポストなんですけれども。ちょっと動くかな...。今大会でアメリカが1000個目のメダルを取ったか、取るかということを記念して、その1000個の金メダルというのがどういうものだったかというのを、グラフで表しているというものです。

  • これですね。このにょろにょろにょろっとしたのが全部金メダル。この1つ1つに、そのメダルの内訳が埋め込まれていたりするわけです。スクロールダウンしていくと、それぞれの分野ごとの金メダルに遷移していったりとか...。ちょっと、気持ち悪いですけどね。

  • 男女別でこういう比率になっているとか、そういう分析的なことを、こんな感じで見せていくと。これが1つのデータジャーナリズムのやり方ですね。ワシントン・ポスト紙。

  • 次はインタラクティブ。ちょっとゲームみたいな形で、読者の側も参加して何か入力したりとか、ボタンを押したりとかいうような、参加してニュースを楽しんでみましょうという、そんなような取り組みもあります。

  • これフィナンシャル・タイムズなんですけども。これもリオ五輪に合わせて作り込んだ、ちょっとゲームっぽいやつでですね。競技のスタートダッシュをコンマ何秒で切れるかというのを試してみてくださいという。(動画を見ています)

  • 0.18。あんまりよくなかったですねと。こういう非常に単純なんですけど、そのスタートダッシュの難しさというのを...。読者にも参加させて...。

  • ひどい、0.76もかかってひどいという結果ですが。こういうような形で、それぞれの競技のスタートダッシュというところに注目して、アスリートがいかにすごいのかということを、自分との比較の中で体感させるという、そういうインタラクティブのコンテンツですね。

  • こんなように、あなたはどういう競技に向いていますか、みたいな。これも1つ1つ質問に答えていくと、こんな競技にあなたはぴったりです、みたいな結果が出る。これもゲームっぽい。ちょっと昔にはゲーミフィケーションといったみたいな。ニュースをゲーム仕立てのコンテンツとして読者、ユーザーに参加してもらうというやり方です。

  • 朝日新聞も...。今までのは割とヨーロッパ、それからアメリカの先進的な事例でしたけども。日本でも、朝日新聞もそれなりに頑張っています。

  • これもやっぱり、リオ五輪でロシアのドーピングの問題が指摘されましたけれども、それをまとめたマルチメディアコンテンツという、リッチ・コンテンツというようなくくりで、そんなに派手さがあるわけではないんですが、ちょっと普通の記事とは違うような見せ方をしています。

  • スクロールをしていくと、こういう形でグラフが自動的ににょろにょろにょろっと出てきたりですとか。これは、こんな形で検査を潜り抜けてましたというのを図解で見せたりとか。これがドーピングの話です。

  • もう1個、猫ひろしさん。猫ひろしさんも、リッチ・コンテンツを作りました。(動画を見ています)

  • これもグラフィック中心ですけど、間にインタビュー動画を挟んだりとかっていうようなことを。(動画を見ています)

  • こうやって動画とか...。これはインタビューですね。(動画を見ています)

  • こんな感じで。こういうデータのグラフ化、それからインタビュー動画、それからテキスト。そういったものを組み合わせて記事を多面的に読んでもらうというような作り込みですね。

  • もう1つ大きい流れとしては、ソーシャルメディアの活用というものがあります。これは相当有名な動画で。それこそカンヌでも賞を取っている動画で、もしかしたらご覧になったことがあるかもしれませんが、ガーディアンのコマーシャル動画ですね。

  • 3匹の子豚がオオカミを茹で殺した容疑で、警察に踏み込まれて逮捕されてしまうという、そういうお話です。

  • (動画を見ています)これに対して、ソーシャルメディアでそれはおかしいんじゃないか、という声が上がってくるというストーリー。

  • (動画を見ています)インターネットで証拠画像みたいなものが上がっています。

  • (動画を見ています)

  • これは、こういう事件を一方からではなくソーシャルメディアの動きも全部ひっくるめてガーディアンは報道しますという、そういうメッセージのコマーシャルです。

  • 新聞社、あるいは既存メディアがソーシャルメディアに対してどういう取り組みを始めたのかということを表す、代表的な動画の1つです。

  • 新聞記者のソーシャルメディアの取り組みでいうと非常に代表的なのが、このニコラス・クリストフさんという、ピューリッツァー賞を確か2回受賞しているアメリカのニューヨーク・タイムズの名物コラムニストなんですけど。もちろん本業は新聞のコラムを書くことなんですが、ソーシャルメディアを活用しているという点でも図抜けていて。

  • ちょっと数字見づらいかと思うんですけど。この人のフォロワーが184万人います。セレブリティー並みなんですけど。これツイッターだけなんですが。もう1人、ニューヨーク・タイムズのこの人も有名なコラムニストなんですけれども、ちょっと1桁落ちますけど、やっぱりフォロワーは71万人いますね。

  • さっきのクリストフさん。これはフェイスブックですけれども、いいね!ボタンを押しているのが65万人とかですね。これはグーグルプラスです。これもやっぱり100万人ぐらいの...、150万人のフォロワーがいます。ほかにYouTubeでもチャンネルを持っていて。インスタグラムでも4万人ほどのフォロワーがいて、ちゃんと投稿もしている。

  • これはピンタレストですね。あんまりフォロワーはいないですけど、やっぱりピンタレストの投稿もしていると。これが本業のニューヨーク・タイムズのコラムのページですけども。この下のところを見ると、こういったソーシャルメディアへのリンクが全部載っかっていてですね。

  • このコラムだけじゃなくて、フェイスブックページとか、グーグル+、それからYouTube、ツイッターでも発信しているので見てねというのが、コラムの一番下のところに必ずついてくるというような形の活用をしています。

  • こういったソーシャルメディアを使ったりとか、人工知能を使ったりとか、あるいはVRを使ったりとかということを、先進的な取り組みをするには、それなりの背景、理由があります。

  • 1つは、先ほど申し上げたインターネットの広がりですけれども。インターネットが今、どれぐらいまで実際に広がっているのかというのを示したのがこの図です。

  • インターネットの利用人口をかなり昔からまとめている機関のデータなんですけども。現在は全世界で、ちょっと見にくいですけれども、34億人がインターネットを使っている。世界の人口が74億人ですから46%。ほぼ半分、途上国なんかも全部ひっくるめてで、ほぼ人類の半分はインターネットを使っているというのが現状です。

  • そのうち16億5000万人がフェイスブックを使っているというデータが出ています。16億人っていうとどれぐらいの規模かっていうと、今、中国の人口が13億、インドが12億ですから、国家としてはスーパー超国家な規模の利用者を持っているということになります。これがフェイスブックが公開しているデータのページですね。

  • それでフェイスブックと、それから新聞社って、ちょっと目にはほとんど関係ないんですけれども、実は非常に密接につながっていて。これはアメリカの調査機関が公開しているデータなんですけれども、アメリカの成人の44%がフェイスブック経由でニュースを見ているという調査結果が出ています。

  • これはピュー・リサーチというこの手の調査を幅広くやっている機関なんですけど、アメリカの成人の67%がフェイスブックを使っていますと。44%は継続的にそこからニュースを読んでいると。したがってフェイスブックがどういうニュースの扱い方をするのか、どういうニュースを目立たせるのかというのは、逆に言うとニュースメディア、その他のメディアにとってかなり死活問題になりつつあるという、そういう関係にあります。

  • ツイッターは1桁少ないですけども、やっぱり全世界で利用者が3億人近くいます。このようなネットの広がりに伴ってソーシャルメディアを使ったりとかはしているんですけども、一方では新聞社のビジネスという面でいうと、非常にダメージを与えているという部分もあります。

  • 従来、特にアメリカの場合は、新聞社の経営、収入の大半は広告に依存していました。日本の場合は購読料と広告というのがほぼ半々ぐらいですけれども、アメリカの場合は広告費が6割とか、場所によると7割とか、非常に広告に依存をしてきました。

  • ところが、その新聞の広告費となっていたものが徐々にインターネットの広がり、それから、中でもグーグルとかフェイスブックのようなところが広告事業を始めることによって、そっちに大幅な広告の移行が起きてきます。

  • そうすると新聞の側が収入はどうなるかというと、ちょうど2000年代の初めをピークにして、この右肩下がりで広告収入というのは落ちる一方になってしまいました。それまではずっと右肩上がりをほぼ続けてきたんですけれども、2000年から一気に落ち込んでいます。

  • そこに輪をかけて、2008年にリーマン・ショックという非常に大きな不況の波がやってきて、それをもろにかぶったアメリカの新聞社はどんどん廃刊になったりとかですね、あるいはリストラを強行するようなことになり、日本でも非常に大きな話題として取り上げられました。これはトリビューンの経営破綻を取り上げた記事ですね。

  • これも2009年ですかね。広告依存が災いとかってここに見出しが立っていますけども。あるいは「創刊146年の新聞ネットに特化」って、どういうことかというと、紙の新聞を出すと、それだけ紙代もかかってしまうし印刷機も必要になってくる。そのコストがもう賄えなくなっているという現状の中で紙をやめちゃう。

  • あるいは週7日出していたものを週3日にして、中1日ずつ飛ばしちゃうとか、そういうようなことでコストカットをするような新聞社もどんどん出てくるようになりました。「収益求め苦闘」というのが2007年、2008年くらいから現在までずっと続いている。特にアメリカの状況ですけれども。日本の新聞社も全く例外ではないですけれども、ちょっと、そこはあとでご説明します。

  • 一方でウェブ専門、紙を持たないというような報道機関というのも2000年代ぐらいから徐々に出てきています。1つは、調査報道に特化したプロパブリカというところがあります。ここは調査報道に特化し、なおかつアメリカの新聞協会賞よりも権威はあるんですけども、ピューリッツァー賞をとったりしていますね。

  • ハフィントン・ポスト。バイラルメディアと言われて、ネタ系のニュースも結構多いんですけども、ちゃんとしたストレートニュースも手がけている。ハフィントン・ポストも11年前にできています。

  • ここもピューリッツァー賞をとって、報道機関としての王道の取り組みというのもやっているということですね。それで、今までのビジネスモデルではもう立ち行かなくなってきて、従来型の新聞経営者でない人が新聞社を経営するようにもなってきています。

  • これは2013年の8月の事例ですけれども。アメリカの名門紙の1つである、ワシントン・ポストが買収されるという、業界的には非常に衝撃が走ったニュースですけれども。

  • 誰が買ったのかというと、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスさんが個人としてポケットマネーで買収しました。この方ですね。これはアマゾンですね。

  • もう1人、さっき一番最初のところでちょっとだけご説明しましたけど、MITメディアラボの所長をされている伊藤穣一さんという方。この方は日本ではベンチャー、デジタルガレージという恵比寿にあるベンチャー企業の共同創業者でもあるんですけど。この方が、2012年にニューヨーク・タイムズの社外取締役にも入っておられます。

  • この方もIT業界では非常に有名な方で、ツイッターとか、そういったサービスへの投資でも知られている。そういうIT業界のノウハウ、ビジネスのやり方、ものの考え方、テクノロジーの使い方、そういったものを新聞社に取り込んでいって生き残りを図るという1つの流れがここにきて出てきています。

  • これは電通が毎年まとめて発表している、日本の広告費というもののデータですけれども。この一番上の紫色、これはテレビの広告費です。若干下がりつつはありますけれどもそれほどは傷んでいません。

  • その下ですね、問題は。この右側に下がっていっている、この線。この右肩下がりの線が新聞の広告費です。ほぼ2005年以降下がりっぱなしの状態です。逆に2009年ぐらいでクロスして右肩上がりでずっと増え続けているのがインターネット広告費です。ちょうど立場がこの10年で広告費で見ると逆転してしまっている。

  • 更に10年前の新聞広告費を上回ってしまっているというような状況が日本でも起きています。ちょうど位置が入れ替わってしまったということですね。この中で、新聞と読者という関係がどう変わったかというお話をちょっとだけしたいと思います。

  • 先ほど新聞を読んでらっしゃる方ということで手を上げていただいて、ほぼ確認できなかったですけども。かつては、インターネットのなかった時代には、皆さんちゃんと新聞を読んでいました。ほかにニュースに接するメディアがなかった時代というのは、皆さん、きちんと新聞を通じてニュースを読むという習慣がありました。

  • ところが、さまざまなメディア、テレビが出て、インターネットが出てきて、インターネットの中でもソーシャルメディアが出てきてというふうにメディアが多様化することによって、新聞が届く読者の範囲というのもどんどん狭まってきています。読者が分散化していっているという状況ですね。

  • 新聞やマスメディアからの情報に頼らなくても、それぞれ友達とツイッターとかLINEとか、フェイスブックでそれぞれが情報共有をし、情報を発信するというようなことをしています。その中で新聞社としては、その会話の中にどういうふうに入っていくのか、どうやったらばニュースが届くのかということを試行錯誤しているというのが現状です。

  • こんな感じですね。ちょっと見にくいですけど。先ほどのクリストフさんの話に戻ると、彼の場合は新聞でもちろんコラムも書きますけれども、新聞で届かない読者に向けてソーシャルメディア、フェイスブックで発信したり、あるいはツイッターで発信したり。YouTubeで発信したりという、そういう多面的な発信をすることで、何とか幅広い読者にリーチしていこうということをしています。

  • おおよそ新聞記者のソーシャルメディアの使い方というのは、こういう、いわゆる広告業界でも使われると思うんですけど、エンゲージメントということを新聞の業界でも今、非常に意識しています。どうやって読者とエンゲージメントを深めていくかということが、1つの合言葉のようになっています。

  • この人はニューヨーク・タイムズの会長の創業家の人でもあるんですけど。ザルツバーガーさんという方が、やはりソーシャルメディアを使う目的として2つ挙げています。

  • 1つは今申し上げた読者とのエンゲージメントです。もう1つはそれを取材、情報収集、それから情報発信、ジャーナリズムとしてソーシャルメディアを使っていくんだという、この2つを挙げています。ほぼこれが新聞業界の共通理解だと思います。

  • 私自身も、フォロワー全然少ないんですけど、ツイッターでも情報発信をしていますし、個人的にブログもやっていたりします。先ほど、ハフィントン・ポストの名前出てきましたけど、ハフィントン・ポスト・ジャパンというのが日本でも日本語のサイトとして、やっていて。

  • 今、編集長の竹下君というのも朝日新聞出身で。ハフィントン・ポスト・ジャパンという合弁会社は51%がハフィントン・ポストの親会社のAOLが出資していて、49%が朝日新聞社が出資しているという、そういうものであります。そこに私のブログ記事も毎週転載されています。

  • 朝日新聞社自体も、新聞事業、それから先ほどの95年からやっているasahi.com、現在は朝日新聞デジタルという名前ですけれども、そういうデジタル展開もさまざまに手がけてきています。これが朝日新聞デジタルですね。紙の朝日新聞とそれから、ウェブの朝日新聞デジタル。これが今のところの朝日新聞の2本柱ではあります。

  • ツイッターをやっているのは私だけではなくて、全社的にもかなりの数、いくつあるんだかちょっと把握していないんですけども、かなりの数のツイッターアカウントがあって。記者個人だけではなくて、朝日新聞のニュース全体を発信する朝日新聞ニュースというアカウントから、社会部とか政治部とか、部ごとにもグループのアカウントを持って情報発信をしたりしています。

  • それからwithnews(ウィズニュース)。ウィズニュースはご存じの方いらっしゃいますかね。あまり知らないですかね。これも、朝日新聞デジタルをやっている編集部の中の1つのチームというか、専従は2人くらいしかいないんですけども、2年前、3年前ぐらいから始めた、ほぼバイラル系のニュースを発信している...、別ブランドで発信しているサイトです。

  • 結構人気で、月間で8000万ページビューぐらいはいっているようです。それからこのほかにCNETJapanという、これはテクノロジー系のニュースを配信しているサイトも朝日新聞のグループの中にはあります。

  • CNETとかZDNetとか、IT業界系のニュースの専門ページですね。先ほどのハフィントン・ポスト。それからメディアラボ。これは新規事業開拓をやっています。

  • MITのメディアラボとも提携していましたけれども、テクノロジーの分野で新しいビジネスの可能性を探るというようなことをやっています。こんな感じですね。A‐portというこれはクラウドファンディングのサービスなどもこのメディアラボで提供しています。これはコンテンツマーケティングのsomewrite(サムライト)というところ買収しました。...というようなことをやっています。

  • 今までの中で触れていなかった1つの分野として、メディアでもネット、既存のメディアでもネットでもないという情報発信者というのは誰かというと、まあ、皆さんですね。誰もがメディアになっているというこの状況も、1つメディア環境の変化としてはあります。

  • 典型的なのがこういう感じですね。これニコニコですけども。こういった形で動画に弾幕を張って、ユーザーもメディア発信に参加していくというようなことが、極めて手軽にできるようになってきています。

  • 一人一人が、こういうスマホさえ持っていれば、1時間の生中継でも何でも手軽にできてしまうというのが現状のメディアの状況です。こんな感じですね。これまではプロのカメラマン、プロの新聞記者が事件の現場に行って、そのニュースの第一報を報じるというのが基本形ではあったんですけども、すでにそういう状況ではなくなってきている。

  • 例えば、去年のフランスの新聞社の襲撃事件がありました。テロの事件で非常に話題になって、テレビなんかでもやっていたのでご存じの方も多いと思いますけれども。この事件で、実際に犯人たちが襲撃した様子を捉えた映像も出回っていたかと思うんですが、これはプロのカメラマンが撮ったものではありません。

  • 近所にいた人が偶然捉えた動画だったということです。これもそうですね。黒人が白人警官に押さえつけられて窒息死してしまったっていう、アメリカの事件ですけど。その状況を動画で押さえていたのは、近くにいた知り合いが、持っていた携帯電話でその証拠の映像を撮ったという経緯があります。この方ですね。

  • これも有名なんですが、今月「ハドソン川の奇跡」とかいうので映画が多分、公開されると思うんですが、その「ハドソン川の奇跡」の最初の映像、第一報の映像です。

  • これは、やっぱりプロのカメラマンではなくてですね、近くを通りかかったフェリーに乗っていた人がiPhoneで撮った写真です。それをツイッターに上げたのが最初の現場写真でした。その写真はネットを駆け巡って、こういう形でニューヨーク・タイムズでも掲載されるというようなことになっています。

  • これは震災の時の南相馬の市長さんですね。テレビカメラがインタビューをしたわけではなく、ご自身で動画を撮られてYouTubeにアップして、世界に向けて発信をされたというケースです。英語の字幕をつけたことで、このYouTube動画はかなり世界的な話題になって、タイムの2011年の100人にこの方が選ばれるというようなことになりました。

  • 津波の映像というのは皆さん、携帯などで撮ってYouTubeにどんどん上げていったのをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。こういった形で、今までは既存のメディア、新聞社やテレビ局が担ってきたような情報の記録と発信というものが、スマホを持っている人が誰でもできるように、一人ひとりができるようになってきたというのが1つの大きな変化です。

  • それが大事件だということを気づかないでツイートをしてしまったという、ちょっと間抜けなケースですね。夜中に...パキスタンに住んでいらっしゃる人なんですけど、夜中1時にヘリコプターがホバリングしていて非常にうるさいというようなことをツイートしています。

  • ヘリコプターがなんか落ちたようだと。ヘリコプターじゃなくてUFOかもしれない、というようなことをツイートしているんですが。これは、ヘリコプターが実際に飛び回っていて、これが現場の写真ですね。

  • 何が起きていたのかというと、アメリカの特殊部隊がイスラム過激派の指導者のビンラディン容疑者を暗殺する秘密計画を実行していた、その最中の動きを勝手にツイートしてしまったという、そういう...。あとで、こういう形で新聞記事にもなっていますが、そういうことも起きているということです。

  • これもちょっと前の話ですけれども、フェイスブックなどを舞台にして中東の政変が起きる1つの原動力になったのがフェイスブック、それからツイッター。

  • チュニジア、エジプトで政権が転覆するという動きがありましたけど、「アラブの春」というような言い方をされましたが、ネット革命というような名前もついて、こういうソーシャルメディアで情報を共有することで政治を変えていくというような動きもここでは、注目を集めました。2011年の1月のことですね。

  • 誰もが情報を発信するとなると、その中にはデマとか意図的に偽の情報を紛れ込ませたりというようなことも起きます。既存のメディア、新聞社やテレビ局が発信している情報が100%正確かというと、そうとも言い切れませんが、中には間違っている情報もあることはあります。

  • しかし誰が発信したのかわからないという情報だと、更にその信頼度というのは非常に怪しくなってくるわけです。これ、ちょっと前の話なんですけど、インドでですね、化学工場の事故で一晩5000人亡くなっちゃうという非常に悲惨な事故があったんですが。史上最悪という見出しが立っていますね。

  • その事故から20年後に、その事故を起こした企業が被害者に全額賠償をするというようなことを、広報担当者がBBCの番組で表明するということがありました。ところが、これが完全に偽物だったという落ちですね。

  • 「BBC、ニセ広報信じ誤報」という。これ何が起きていたのかというと...この人たちです。この人たちが、この右側の人が、さっき映っていた人ですけども、この人ですね。この人たち、今、大学でメディア論を教えているそうなんですけれども、いわゆるアクティビストですね、活動家です。

  • メディアを使って自分たちのメッセージを伝えていくということを、かなり過激な方法でやっていっている人たちです。このとき使ったのは、事故を起こした企業のホームページの偽物を作って、そこで取材の受付をして、それで偽者がBBCの番組に出るというようなことをやっていました。

  • これが偽ページ、これが本物のページです。この偽ページを信じてBBCが取材申し込みをして、さっきの、こういうふうに出てしまったという結末ですね。この人たちは偽のニューヨーク・タイムズというのも作って、まだイラク戦争が終わっていない時に、イラク戦争終わりましたと、勝手に終わらせちゃったという、そういう新聞を全米で配ったりもしている、そういうアクティビストです。

  • こういう偽情報も出回ったりもします。こんなビデオにもなっているので、もしご関心があれば。こういうのもありますね。ブロガーって、結局その人、本物なのかどうか顔が見えなかったりするので、信じていいんだかよくないんだか、よくわからないというようなケースもままありますが。

  • これは法律で同性愛が禁じられているシリアのダマスカスで、同性愛の女の子がブログをやっているというような触れ込みで、メディアで取り上げられたケースなんですけれども。メディアがインタビューをかけようとしても決して会おうとしなかったと。いろんな言い訳をして決して会わなかった中で、メディアでの扱いはどんどん広まっていたようなんですが、実際にはこのおじさんがやっていたという、そういう結末です。

  • ウィキペディアも使うのが結構気をつけなくちゃいけなくて。レポートなんか出すときにウィキペディアをそのまま丸写しにしないでくださいとか言われるんじゃないかと思いますけれども、それはその通りで、丸写しにするとどうなるかという事例の1つがこれです。

  • モーリス・ジャールさんという、アカデミー賞の作曲賞を何度もとられている、古い映画の「アラビアのロレンス」のテーマ曲とか、そういう古い名作の映画の音楽を手がけていらっしゃった方なんですけれども。その方のイギリスのガーディアンでの訃報記事なんですが。この記事の中には長々と書いてありますけれども、これ全部訂正文です。

  • さっきの方の、この訃報記事、死亡記事の中で引用した生前の発言これらが全て嘘でしたという。ウィキペディアにあったので、そのままそれを引用したところ、それが裏取りをしないで、確認作業をしないで載っけたために結果的にデマであるということがわかりませんでしたということを、これだけの行数を使って訂正しています。

  • この人が、これ大学生なんですけど、ウィキペディアに嘘を載せたら何が起こるか試してみましたという割と軽いノリの人なんですが。起きたのは名門といわれるガーディアンが誤報を出してしまうという結末が起きたということです。

  • ウィキペディアを使う場合のポイントが1つあります。さきにこっちをやってしまおう。ウィキペディアの下のほうに脚注という項目があります。これは何かというと、そのウィキペディアに書かれている情報のそもそもの出元、出典をまとめたところです。

  • こんなふうに長い記事だと、この脚注もかなりのボリュームになりますけれども。この脚注で引用されているものが、新聞記事、あるいは出版物、あるいは役所が出している報告書とか議事録とかそういったものであれば、しかもその原点にあたることができれば、そこで情報を確認したうえでレポートなりに引用することはでき、あるいはそこを端緒として何か調べ物をしていく場合にさらに深堀りをしていく。

  • その手がかりとして使うのにはウィキペディアというのは非常に有用な場所ですけれども。この上にある、その歴史とか経緯とかという部分には、先ほどのように悪意を持って全くの嘘やでたらめを書き込む人がいるので、上のほうはほどほどにしておいて脚注を使い倒すというのが、ウィキペディアの非常に賢い使い方かなと思っています。

  • それで、もう1つ。ウィキペディアの怪しい書き込み、日本でもありました。霞が関の役所からウィキペディアに、自分の役所に都合のいいような書き込みが結構な数なされていたというのが、それを暴露するソフトを使うことでわかってしまったという記事ですね。

  • ちょっと古いですけれども...。厚生労働省からの書き込みの中では、民主党、今の民進党ですね、長妻さん。これは年金問題を追及したことで有名な方ですけれども。

  • この長妻さんの項目に、行政官を酷使して自らの金稼ぎにつなげている批判もあるということで、長妻さんに散々とっちめられていた厚生労働省が、その意趣返しでこういうことをウィキペディアに書き込んでいたということがばれてしまったというケースですね。先ほどの脚注。

  • メディアの情報も信じられないという...、100%は信じられないというお話を、ちょっと先ほどしましたけども、これはアメリカのケースです。ツイッターを乗っ取られてしまったというケースですね。この間の熊本の地震でも、そんなようなケースがちょっとありました。

  • デマいくつか流れてたかと思うんですけど、街中をライオンが歩いているとか、イオンが火事になっちゃってるとかですね。というようなのがいくつか目にされた方もいらっしゃるかと思います。ツイッターでも結構出回ったりしていました。これですね。

  • 右側がライオンがうろうろしていますというやつで、左側がイオンモールが火事になっちゃってるという写真で、いずれもデマだったんですけど。それをニュースでピックアップしちゃったんですね。「イオンモール、熊本で火災発生情報」とテロップを入れちゃっています。あとで訂正しているんですけども、いったんは電波に乗って広がってしまったと。

  • そもそもデマなのできちんと確認しなくちゃいけないんですけど、そういうものもマスメディアを通じて更に広まってしまうということもあるということですね。東日本大震災の時にも、こんなチェーンメールとかツイートが流れたのを、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれないですけれども。

  • さっきの熊本の地震もそうですけれども、非常に大きな自然災害とかが起きた時って、みんなとても不安になるので、そうするとこういう情報が流れると、皆さん善意で早くみんなに知らせなきゃということでリツイートしたりとかっていう、全然悪気はなくてやっちゃったりするんですけど、それが結果的にデマを広めて、本当に助けが必要な人達の情報が届かなかったりということで、善意が結局ほかの人を助けるんじゃなくて、ほかの人の助けを阻害してしまうというような結果を生むこともあります、ということを気をつけていただければと思います。

  • この場合はコスモ石油が、そういう偽メールが出回っていますというので、否定の情報を流したことで、時間差はありましたけれども、そういうデマは結果的に鎮火することにはなりました。それを受けて、朝日新聞デジタルも、コスモ石油が否定していますよという、デマを否定する情報をメディアとしても流して、鎮火に追い打ちをかけたというそういう順番になってきます。

  • これはもう時間がないから簡単に説明しますね。あと調査報道の中で、メディアだけじゃなくて、読者、オーディエンスの力を借りて、例えば調査報道の資料を点検するというようなこともやっています。

  • これはガーディアンが取り組んだ事例で、イギリス議会の議員報酬の中で、不明瞭な使い方がなされているものが多数出てきたということで、情報公開で出てきたその資料をネットで公開して、おかしいところがないかどうかチェックしてください、協力してくださいというようなことをやった事例です。

  • 私が関わっている朝日新聞のフォーラム面というところの取り組みでも、それほど大掛かりなものではないですけど、読者の声をニュース作りに生かす、読者と一緒に新聞を作っていくというような取り組みを行っています。これ今、フードロスの特集をやっていますけれども、その紙面ですね。ネットでアンケートをとって、そのアンケートをもとに紙面を作ったり...、これはデータですね。

  • アンケートをとったデータを集計して、簡単なデータジャーナリズムみたいなものなんですけれども、こういった形で集計して読者の傾向、意向を探って、それをグラフ化して、その中で自由記述で書き込まれた意見などをもとに、更に取材を進めていくというようなことをやっています。これは自由記述ですね。

  • 中では投書をくれた読者の方に一緒に取材に参加してもらってですね、これはテレビ会議で大阪と東京で打ち合わせ会議をしてるんですけれども、手前の方が全く一般の読者の方で。打ち合わせ会議にも出ていただいて、取材にも参加していただいて、一緒に新聞を作っていただいたというケースもあります。「読者が会議・取材にも参加」という形で紙面でも紹介しています。

  • あとこれは編集会議。ロボットを特集したときに、どういう話題を報じていったらいいかというので、この後ろ側には読者の方50人くらいに来ていただいて、一緒に読者と編集会議をするというような、公開編集会議というような取り組みもしてみました。いろんなことをやっていますということですね。

  • ほぼ時間になったかなと思いますので、この辺で。あとは付録ですね。この辺でもし何かご質問などありましたらお受けいたします。どうぞ。

  • (会場質問)

  • いい質問ですね。まず、なんで新聞社がイノベーションに取り組むのかということですけれども。先ほどの、例えば広告収入の落ち込みのご説明もしましたけれども。このまま黙っていると、ビジネスモデルは、もう早晩だめになります。

  • つまり、新しいことに取り組まない限りは、ビジネスとしては終焉を迎えるということが、それが何年か先を行っているアメリカのケースを見ても、黙ってると潰れちゃうわけですね、新聞社はどんどんどんどん。なので新しい収入の道を探る。

  • 収入の道を探るだけではお客さんはつかないので、新しい収入を得るためには、新しい何か情報発信、新しい表現の仕方もひっくるめて、新しい収入の道を探るということをやっていかなくてはいけない。それをひっくるめて、ざっくりイノベーションと呼んでいると。そういうご理解をしていただけるといいかなと思います。

  • もう1つは、そういう形でビジネスモデルが毀損されてしまっているという中で、なぜ新聞が必要なのか。新聞は、はっきり言うと別にそう必要でもないです。新聞はそう必要でもないですけれども、信頼できるニュースとか、あるいは権力を監視する役割のジャーナリズムといったものは、新聞という形態であるかどうかに関わらず、社会としては恐らく必要なんじゃないかなと思って我々の業界の人間はやっているわけですけども。

  • 新聞という商品はだめになるかもしれませんけれども、情報を伝える、権力をチェックするという、機能としてのジャーナリズム、ニュースというのは、恐らくこの社会が続いていく限りは必要なのではないかなと。

  • ただそれは霞を食ってはやっていけないので、それを支えるような新しいビジネスモデルを考え出すためにイノベーションをどうしても必要、という順番に恐らくなるんだと思います。お答えになっていたでしょうか。ほかに、どうぞ。

  • (会場質問)それもいい質問ですね。この先、新聞記者がどういうスキルが必要になってくるのかっていう話とも重なってくると思うんですけど。

  • まさにそんな話を昨日、ヤフーニュースの責任者の方と、元ニコニコニュースの編集長をやってた人と、ウィズニュースの編集長と一緒に話をしたんですけど。そこで求められるスキルっていうのは、単純に機械にできないことができるかどうかと。

  • 機械ができることというのは、データが与えられたらば、それを決められたフォーマットに間違いなく落とし込んでいくということは非常に機械はうまいですけれども、じゃあ例えば業績がものすごく上がった、ものすごく下がったということの背景に何があるのか。

  • それは例えば歴史的に見るとどういうことなのか。アップルの業績が上がっている、フェイスブックの業績が上がっている、その背景に何が起きているのかとか、そういう読み解き。あるいは、その人ならではの方向の示し方、そういう、その人にしかできない記事を発信する、書くっていうスキルが、これからますます求められるのではないかと。

  • 記者の個性って言ってもいいと思うんですけど、他の人には真似できないようなものの見方、個性、そういったものが出せるかどうかということが、恐らく生き残りの非常に大きな条件になってくるんじゃないかと思います。だから、みんなと同じことをそこそこできるっていう人だと、それはAIに取って代わられちゃう可能性は高いです。