• 皆さん、こんにちは。よろしくお願いいたします。NHKの足立と申します。まず簡単に自己紹介ですけれども、足立義則といいまして、年は48歳です。NHK報道局の遊軍というところで記者をしています。

  • 遊軍っていうのは、決まった記者クラブ...記者クラブって、みんな知ってるかな。決まった受け持ちの場所っていうのがないんですよ。毎朝、出勤する場所っていうのが、あんまり決まってないんです。会社に行ってもいいし、取材先に行ってもいい。別に、家にずっといてもいい。遊園地に行ってもかまわない。それは仕事であれば、取材であれば。どこに行ってもいいから、とにかく何かネタを持ってきて、結果を出しなさいというような社内フリーランスみたいな部署です。

  • 「遊軍」って軍隊用語で遊撃手にも似てるんだけれども、野球の。正規の軍隊ではなくて、そこの間を、間隙を縫って成果を上げるという、そういう部署ですね。私は92年にNHKに入ったんですけれども、最初はNHKって地方転勤なんですよね。全国転勤の部署で高知県っていうところに行きました。四国の高知県ですね。

  • そこで4年間過ごしまして、そこから東京の社会部というところで、8年間いましたけれども、そこから広島に行って、科学文化部っていうところに行って、そこからネット報道部、今は遊軍プロジェクトというところにいます。記者になって大体...92年だから、24年とか25年目になりますけれども、一貫して遊軍ですね、ほとんど。一つのところっていうか、同じ部署、それから決まった仕事、警察とか、政治家とかね、そういったところをしたことない。ずっと遊軍しかやってないという意味では、珍しいと思います、私みたいな人は。

  • 「元祖秋葉原キッズ&体育会系」と書きましたけど、何かっていうと、物心ついたころからゲームがあったわけですよ。ゲームっていっても、インベーダーとか、テレビゲームですけどね。ゲーセンっていうのが出たころです、僕が小学生のころに。

  • それから、もちろん漫画はありました。ゲームとか漫画に囲まれてってほどでもないけど、たくさんある中で育った最初の世代だと思います。秋葉原っていうところが、電気街から今みたいなコンピューターの街、ゲームの街になるっていうような時代に育ったっていうものですね。

  • 体育会系っていうのは、学生時代、ずっとスポーツばっかりやってまして、中でも水球っていうのをやってました。オリンピックで久しぶりに出場したんですけど、あっという間に負けちゃいましたけどね。

  • 今回、取材テーマというのは、ずっとしてきたのはコミュニケーションです。便利な道具が増えてきています。昔と比べて、iモードのころから比べても、スマホ、ツイッター、フェイスブック、それからLINE、コミュニケーションは密になればなるほど寛容とか、不寛容の幅が広がっていくというのが僕の取材テーマですね。いろんな番組を作ってきましたけれども、少年事件、ネットなどが仲介したというようなトラブルなども、よく作ってきました。それから文化的な仕事もしてきましたね。

  • ちょっとここで皆さんにお聞きしたいと思うんですね、早速ですけれども。これからいくつか事象を見せます。これとか、これとか、あれとか。一番左上にいるのが戦争反対。安保法案のときのキャンペーンですね。右側が原発反対運動です。その下が、外国人排斥運動ですね。右側は安保法制の大きなデモ。左下も、これは核廃絶のデモです。

  • それから一番右下というのは、皆さん、記憶に新しいかもしれないんですけど、「保育園落ちた日本死ね!!!」という書き込みを端に発したデモです。これらに共通するものっていうのは、なんでしょう?と聞きたいと思いますけれども、ちょっと考えてみてください。当てちゃってごめんね。なんでしょう?民衆が動いてますよね。すごい何千から何万とかね、動いてますよね。

  • なんでしょうか?この列の一番前の君はどうですか?これとか、どのケースもネットで書き込まれた情報というのが、シェアされてシェアされて拡散して、大きなうねりとなって、数千、時には数万という人数を動かしたというのが共通項です。

  • 新しい時代、われわれにとっては新しい事態が始まってるわけですね。「保育園落ちた日本死ね!!!」のケースを見てみますと、ちょっと順番で見てみます、何も言わずに。これがこうなって、こうなって、こうなって、こうなったということです。

  • もう一回、順にいきますね。最初は「保育園落ちた日本死ね!!!」という、はてなブックマークの匿名のブログでした。そこに、とある人が保育園の抽せんに落ちました、選考に落ちました、なんなんだよ、日本。一億総活躍社会じゃねえのかよ。見事に保育園落ちたわ。どうすんの?私、活躍できないじゃない。総活躍社会とか言っちゃって。

  • これが、やや話題になりました。なぜ話題になったかというと、ちょっと、ことばづかいが乱暴なんですよね。

  • というのと、あまりにも、せきららな。この人、本当に大変なんだなっていう。だから、ちょっとことばづかいが乱暴なんだなって、みんなで思いました。一応、そこそこアクセスを集めてたんですけれども、それをYahoo!ニュースで、Yahoo!個人の記事に、NPO法人フローレンスの駒崎さんという、かなりフォロワーも多くて、ネットの中ではインフルエンサーとされている方です。その方が、これを取り上げました。

  • 「『保育園落ちた日本死ね!!!』と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由」。この方は、ご自分で保育園を造ってらっしゃったりとか、保活、少子化に真っ先に取り組んでいる人なので、相当詳しくデータも交えて解説しました。これによって、かなり拡散したんですね。

  • 国会で、民進党の議員がこれを取り上げました。「『保育園落ちた日本死ね!!!』というブログが話題になってますけれども、総理、どうなんですか?」と聞きました。そしたら安倍首相も、そのほかの方々も「そんな匿名のブログなんて誰が書いたか分からない」と。ここに書いてありますが、「本人が出て来い」とか「誰が言ったの?」とか、「出典は?」とか「出典はないんでしょう」という、やじにかき消されてしまいました。

  • これはテレビで中継されました。ネットでも中継されました。そしたら怒ったわけですね、ネット民が。保育園落ちたのは私だと。誰が書いたんだ?っていうふうに、やじが聞いたんで、それに答えたわけですね。保育園に落ちたのは私だ、私だと。デモというか、静かなデモですね。

  • 別に人数もそんなに多くないし、シュプレヒコールをあげるわけでもないと。ただ、これがネットメディア、取材に行って、メディアによって拡散しました。それによって、待機児童対策と。選挙が近かったっていうのもあるんですけど、まんまと動きましたね。

  • 最初は匿名の落書き、落書きっていうと、たいてい炎上してしまうんですけど、匿名の落書きがシェアされることによって拡散していって、政府を動かしたという構図です。大事なのは、「あれ?ここにマスコミって、どういうふうに参加してるんだっけ?」ということなんですよね。最初に書いたのは、完璧に個人ですよね。次に書いたのは、個人のインフルエンサーです。事業家の方です。そこで、国会中継をする。ここでメディアが出てきます。

  • NHKなどが中継していますけれども、ただ、これも別にニコ生とかで中継もしてましたので、それを見たっていう人も多かったです。で、デモになった。デモに参加しようと呼びかけたのも、ツイッターとかで呼びかけが広がったんですよね。デモになりましたっていうことを一部のメディアは伝えました。全部のメディアじゃないけれども、記事にしました。

  • だけど、それもネットメディアも記事にしていました。それによって国が動いたわけですね。この問題が起きたときに、NHKの記者とかディレクター何人もいますけれども、反応を聞いたんですね。「これ、どう思う?」と。「全然、新しいと思わない。これまでも伝えてきました」と。NHKの記事とか、保育園に入れる人が少ないとか、少子化なんだけれども、保育園に入れる人が少なくて、とっても悩んでるということを伝えていたんですけど、なんでこの書き込みがこんなに力を持ったのか分からないっていう声が聞こえましたね。

  • 確かに分からないと思います。言っていることは、今までマスコミが伝えてきたことと同じなんですね。日々、伝えてきたこと。だけれども、これが社会を動かしたのは、なんなのかっていうと、やっぱりそれはシェアによって動くべき世代が動いたということだと思うんです。

  • 今、問題になっているのは、オールドメディアといわれている新聞とか、テレビを見ている層というのが、だいぶ中高年化、高齢化している。40代というか50代、60代となっていて、今、実際の社会で中核で働いている人、30代、40代。または、これから社会に行こうという10代、20代というのに刺さるメディアではなくなってるのではないかということを端的に表している事例なんじゃないかと思っています。

  • なんで、こういうシェアが力を持ったのかっていうのを、ちょっと考えてみたんですよね。人が何か行動をするときって、どういうことを、もとにするでしょうと。なんか、雑誌とか...雑誌じゃないな、今、スマホですよね。食べログであったりとか、NAVERまとめであったりとか見ますよね。当たり前の事を書きましたけど、人の意見とか情報を参考にして行動します。どれだけ参考にするかっていうのは人によると思います。100%人の意見をもとにやるって人もいないだろうし、100%自分の考えだけでやる人もいないと思います。

  • その比率はいろいろだと思うんですけど、ちょっと考えて見ましょうね。まず、変化(1)っていうのは、情報を調べるときにネットをたたくっていうのが一般化しています。っていうのは、もう10年ぐらい前のことですね。十数年、もっと古いかな。ネットが出てきて、なんとなくウィキペディアが使えるようになってきてっていうころだから、十数年ぐらい前だと思います。

  • 何か情報を調べろっていうときに、みんなも図書館にまず行こうって思わないでしょう。ネットたたくでしょう。というのが、すっかり一般化していますよね。変化(2)、ブログっていうのも出てきました。だから、もう10年前ぐらいですね。ブログの普及で、ネットの情報に個人の意見、個人、専門家などの意見というのが増えてきました。変化(3)は、その意見というものをSNS、これが5〜6年ぐらいのことですね。SNSによって、友人とか他人の意見っていうのをシェア、つまり共有とか拡散することっていうのが、簡単にできるようになりました。

  • この10年ぐらいの歴史を経ていって、情報と意見の差っていうのが、とてもあいまいになっています。情報も多いけど、情報かと思ったら、それは人の意見だったと。情報を紹介する人の意見だと。だから、みんなもそうかな...食べログで見て、食べログって人の意見ですよね、あれって。

  • 単に店のホームページを見て、なんかメニューがおいしそうだなっていうよりかは、食べログでの人の意見とか、ツイッターとかフェイスブック、LINEとかで回ってくる、「これ、すげぇおいしかった」っていうのが拡散するっていうほうが増えてるんじゃないかなと思います。情報と意見の差が、あいまいになって、ともすれば意見のほうが情報を上回る。情報とセットとして意見というものが増えてるっていうことが、今、シェアが世の中を動かしてるっていうことの背景にあると思います。

  • 情報をシェアする人たち。その人たち、どんな人なんだろうなと。皆さんも、たぶんそうだと思うんですけど、ネットとかスマホユーザー。検索能力が高くて、10代から40代ぐらい。未成年から社会の中核層ぐらい。SNSなどでシェアされた情報をもとにして判断、行動するという傾向が強いと思います。

  • 単に、メディアで見たっていう、NHKのニュースを見た、朝日のニュースを見たっていうことで動くっていうよりも、それを誰かがフィルターを通して、これはいいとか、これはひどいとか、この記事はおもしろかったよっていうので見るという傾向があります。あともう一つの傾向としてあるのは、既得権益(マスメディア含む)への反感というもの。マスメディアは決して伝えないけど、このことは知っておいてとかね。

  • やっぱり、誤った情報を広げるっていうこともあります。それには、悪意があるときもありますし、善意があるということもあります。ここで、休み時間のときに出てきましたけど、去年のこの講座でも流したんですけれども、ある動画を見てもらいたいと思います。2012年だから、そろそろ4年前となっていますけど、イギリスにあるガーディアンというメディアがあって、そのデジタル戦略をPRするというためのビデオです。何回も繰り返し流しているのは、この動画というのが、今のシェア層、シェア時代を象徴する動画で、とってもよくできてるんですよね。お金も相当かかっていると思います。

  • (動画を見ています)ちなみに字幕ないですから、なんとなく、こうなんだろうなっていう感じで見ててください。まずは何にも言わないで、素で見てもらおうと思います。あとから、詳しく解説しますから。(動画を見ています)

  • というものですけれども、なんとなく分かると思いますけど、「3匹の子ぶた」の話です。

  • もう一回、お見せしますけどね、お見せしますけども、英語使いの方も含めて、これ、もう知ってるよっていうか、この話、大体こういう話ねって分かったって人います?

  • (会場)きのうの授業でやった。

  • きのうの授業でやった?そうなんだ。みんな、やること同じ。じゃあ、大体お分かりかと思います。「3匹の子ぶた」の話なんですけれども、じゃあ、はしょりますね。(動画を見ています)これの、おもしろいなっていうところは、やっぱりシェアが世の中を動かしていく。

  • あと、ネット独自のオープンジャーナリズムっていう文脈でよく語られるんですけど、市民のジャーナリズムとメディアが力を合わせて、真実を追究していくっていう文脈で語られることが多いんですけども、私、それとともに、シェアが世の中を動かしていくっていうことも非常に大きくあると思うんですよね。

  • これとかは、3匹の子ぶたが、最初はオオカミを生ゆでにしたっていうので、機動隊みたいなのが、特殊警察隊が踏み込んで行って逮捕しますと。「そんなの違うわ」って言って、近所に住む人などが「豚は被害者のほうなのよ」って書き込みをするんです。そうしたら、それがどんどんシェアされていきます。どんどんシェアにシェアをしていくっていう。

  • 最初、ガーディアンは、これを記事を書いたんだけれども、このドラマの中でね。ガーディアンは、最初「ぶたがオオカミを生ゆでにした」っていう文脈で書くわけですよね。だけれども、それを信用しなくて、ガーディアンがこう言ってるけれども、私はこうですよと。とすると、ガーディアンのほうより、ニュースをシェアした人のほうを信じて、それが拡散していくということなんですよね。

  • こうしたことっていうのは、最近もあったと思います。ちょっと画面を変えますね。「NHK 貧困女子」というので検索をしましたけれども、「貧困女子」ってやると、やっぱり、まだいろいろな記事が出てきますよね。

  • この問題について知ってる人っていますか?あれ、みんな、知らない?貧困女子の話って。そんなに知らないですか。

  • じゃあ、端的に言うと、これはどんな問題でしょう?ここでは、番組の内容を動画で紹介するっていうことはしないですけど、貧困問題を取り上げる、貧困問題について考える集会っていうのがあったんですね。

  • それをNHKが取材しましたと。その会議で代表して話していた女子高生の方がいて、その方の暮らしぶりなどを紹介して、貧困問題を何とかしてほしいというご本人の方の声をインタビューで紹介して、顔も出して伝えたんですね。

  • それはそれで、貧困問題を伝えるニュースなんですけれども、そうしたら、その放送の直後辺りから、これは果たして貧困なのか?っていう意見がネットの中で急速に出てきて、特にツイッターが多かったと思うんですけど、急激に拡散したんですね。これはどうなのかっていう疑問を思う人たちが最もよく言っていたのが、すごく物が多すぎるじゃないかと、背景に。

  • いっぱい本があったりとか、グッズがあったりとか、というので、おかしいじゃないかと言ってきたわけです。ただ、それに対して別の意見として、これは絶対的な貧困と、日本で問題になってるのは相対的な貧困であると。この集会というのは、相対的貧困についての理解を求めるというものだから、別に、ねつ造ではないというような意見の対立が起きたわけです。

  • ただ、その過程で、粗探しというか、本人への誹謗・中傷が起きたわけですね。出ている女子高生の方の動画のシーンとか、画像というのを勝手に切り出してネットにアップしたりとか、ご本人の名前とか、そういったものをネットに流して誹謗・中傷するというふうに広がっていったわけですね。炎上といえば炎上したと思います。これも、シェア層、シェアが危うい方向にいっていったという例だと思います。

  • それ以外でいくと、去年のオリンピックのエンブレム騒動ですね。五輪のエンブレムが出ましたと。マスコミも伝えましたと。ただ、ネットの中では、あのエンブレムは、なんかこれに似てるぞっていうのが、毎日のように出てきたわけですね。

  • ベルギーのエンブレムに似ているとか、このデザイナーの過去の作品がこうとか、デザイナーの人間関係がこうだとか、広告代理店の陰謀とか、なんとか...となったわけですね。というふうに、ネットの中でオープンジャーナリズムもあるんですけれども、自分で既存メディアというものを信用しないで、自分で調べて、それをネットにアップするという個人ジャーナリストが増えています。

  • それはそれで時代の流れですし、歓迎すべき流れだとは思います。ただ、それがシェアされることによって、大きなうねりになっていくと。でも時には、やっぱり間違ったデマも流れていく。じゃあ、マスコミってどういうふうにすれば、その流れに対して、それが間違っていたとすれば正すことができるのか。または既存の伝え方っていうのを、どういうふうに変えていけばいいのかっていうのが、今、私たちが直面している大きな課題です。

  • だから、シェア層に届く内容というものを考えないといけないわけです。皆さん方も分からないことがあったら単語を見ますよね。「相対的貧困」って、この人言ってるけど、何だろうって、「相対的貧困」ってやりますね。そうすると、ウィキペディアとか出てくると思います。

  • そうした集合地によるウィキペディアなどが、すっかり一般的になっていた今は、より高いレベル、より深い内容、それから、より細かい疑問に答える内容というのが求められています。もう一つは、既得権益とかタブーに切り込む内容ですよね。かなり、若年層と、高齢層での格差、不公平感が強まっていますので、そうした既得権益とかタブーに果敢に切り込んでいく報道が求められています。

  • あとはシェアされやすい形ですね。ツイッターとかフェイスブックで、これ見てっていうふうにシェアしていきやすい形です。となると、テレビって、とたんに弱いんですよね。

  • テレビって1分とか、短いニュースだと1分なんですけど、リポートになっていくと2分、3分。「クローズアップ現代」などの報道番組になると30分、時には1時間もかかっちゃうわけですよね。情報っていうのを知るために、1時間もかかってしまうという。それは、うかつにシェアできないですよね。シェアをされやすいという。

  • だから、だんだんと20代、30代、40代というものを動かしていく力っていうのが薄れてきてる、低くなってきてるということは言えると思います。長いと。皆さんも、YouTubeの動画を見るときに、最初にコマーシャル出るじゃないですか。あれが3秒とか4秒で消えますよね。その時間でさえ惜しいでしょう。それが1分、2分または45分、1時間というものを、動画世代に、どういうふうに伝えたい形でやっていくかということを考えないといけないと思います。われわれテレビ局としては。

  • だから今、進めているのが、あとでもご説明しますけれども、複雑な社会問題というものを、1分、30秒、1分、1分半とかでショート動画にしていこうという、これが今、世界的に、とっても、はやっていますね。あとは、ウェブで見ておもしろい形。それがVR。1つやってるのは、その形だと思います。

  • あとは、伝わることばで伝えるっていうことです。これまでのテレビの原稿とか、新聞の文体というものではないということだと思います。そこで、私たちが今、やっていることですけども、まずシェア層で何が話題になってるかということを探るために、ocial Listening Teamというものを始めています。あとは、深く早く取材展開する機能ということで、特別報道チームというものを作っています。

  • 組織が横断した、政治部とか社会部とか経済部って、なんとなく聞いたことが...たぶんないと思いますけれども、組織横断の記者チーム。それから、統計分析とかのプログラミングのスキルも含めた記者やディレクターのチームを作っています。そして、シェア層に向けて発信する機能として、ショート動画とかVRというものを作ったり、SNSで発信ということを毎日しています。

  • そのソルトっていうのを説明したいと思います。日大の法学部の新聞の方々も多数、働いていただいていますけど、Social Listening Teamですね。ソーシャルメディア、ツイッターとか、フェイスブックからニュースにつながる情報をキャッチする専門チームですね。

  • 今、学生と契約スタッフ、元記者、ディレクターなどなど交代制で毎日24時間稼働していますけれども、大体100人体制でやっています。100人体制っていうのは、1か所に100人っていうんじゃなくて100人登録で、1回の勤務は交代制で10人ぐらいですね。これがNHKの報道局の様子なんですけれども。これがソルトの様子ですね。

  • 右側にいるのが学生さんたちです。いろいろなことをしゃべりながら、ツイッターとかフェイスブックに事件・事故をキャッチできそうな検索ワードをセットしていって、そのタブを巡回しながら、何か引っ掛かっていないかなと、何か事件が起きていないかなと探索しています。学生たちがやっていますね。細かい文字ですよね。よく見えないけど、「駅前で事件なう」とか書いてあるんですよね。

  • それを学生が見つけて、横にいる大人のデスクと相談しています。この書き込みは本当なのか?っていうのと、ニュース価値がどれくらいあるのかと。これはニュースだなと思ったら、後ろにデスクと記者がいるので、「この情報、至急、神戸局に送って」って言いますね。こんなような毎日をしています。

  • 例えば、どんなことをやっているのかっていいますと、こういうツイートがあったとします。「しまむらの中にいたら、外から車がつっこんできて、お店ぐちゃぐちゃになったよう。警察と救急車いっぱいきた。まぢ怖かったー。怪我した人心配ー!」というようなツイートですね。

  • これ見ると、なんかニュースだなっていう感じがしますよね。しまむらに車が突っ込んできて、けが人が出ていますと。だけれども、本当かどうか分からないし、本当だとしても、どのしまむらなのかっていうことは分からないですよね。じゃあ、調べましょうというので、「しまむら」っていうことばで検索します。

  • だけれども、その前に、この、しまみさんっていうアカウントが、どんな人なのかっていうのをプロファイリング、検索します。いろんな過去のアカウント、つぶやきをずっと見ていくわけですよね。なんか楽しそうだなと。僕たちが見るのは、まずbotじゃないかなっていう。プログラミングが勝手にやってるんじゃないかな?っていうのと、あと、いかにも危ないことを書いたりしてないかなとかね。人をだまそうとしたりしてないかなっていうのを見てみます。

  • 普通の人だなと分かったら、「しまむら」っていうことばで検索をします。「最寄りのしまむら」とか「しまむらの中に軽自動車が突っ込んでた!!」と。同じようなこと、「しまむらに突っ込んだ」という同じことを、3人以上の違う人が言ってたら、たぶん本当なんだろうなという3人ルールっていうのをやっています。

  • これを見ると、どっかのしまむらに車が突っ込んだなっていうことは言えるんでしょうと。だけれども、どのしまむらに、日本中全国しまむらがいっぱいいますよね。だから、しまむらがどこなんだろうなっていうことが、まだ分からないと。この時点で、しまむらに電話しても、しまむらも把握してないと思います、本店は。なので、これをつぶやいている人のプロフィールとか、いろんなものを見ますね。

  • 「北山のしまむら」ということでいったりとか、プロフィールに「愛知県豊橋」と書いてあると。これ、豊橋かな...というので地図を見たりすると、ファッションセンターしまむら牧野店っていうのが豊橋にあって。ちっちゃいけど、北山っていう交差点にありますと。あっ、これだ!というので、NHKの名古屋局にデスクが電話をします。

  • そうすると名古屋局から、そうなんですかって言って、記者とカメラマンが現場に行きます。現場に行って取材して、映像を撮影して、NHKの局に戻って、その映像を編集します。記者は原稿を書きます。それを午後6時のNHKのニュースで読むっていうので、こんな感じのニュースになりますと。ここら辺がソルトの1つの流れですね。

  • 最近でいきますと、8月31日に岩手県の岩泉町でグループホーム...大雨、水害で多くの方がお亡くなりになった悲惨な水害ですけど、その一報を伝えたのが地元の民間の方でした。割と、のんきな感じで「はぁ〜い」とか言ってますけど、この写真を見たときに、われわれは、びっくりしたんですね。夜中にずーっと雨が降り続いていたんだけど、全く映像が...どこでどういうふうに被害が出てるかっていうのが全く分からなかった状況なんですよね。

  • だから、特に左の下の写真を見たときには、まさに3.11の光景を思い浮かべるような、そんな思いでしたね。これを見たのが午前5時ぐらいだったんですけど、そこから、これは大変だ!となったわけです。投稿第二弾のところで、介護施設が冠水して、向かいにあるグループホームの避難が間に合わなかったと。これ、大変なことが起きていると分かって、いち早く取材に入ることができて、また、こういう被害が起きてるから、皆さん本当に気をつけてくださいっていう、次の被害を食い止めるための報道にもつながったということです。

  • こういうソルトの発足の動機ですけれど、今みたいな災害対応っていうことが、もともと動機にありました。東日本大震災が起きた5年前の3月11日ですけれども、そのときに、私、NHKの科学文化部というところにいたんですが、ツイッターの担当というものをしてたんですね。ツイッターを担当してて、今みたいに現地で被害を伝えるツイートを見つけて、それをもとにして取材を伝えると。

  • 「気仙沼市で、このような火事が起きている」とか、「逃げ遅れた人がいる」というツイートを見つけては放送して、なんとか救助につなげてくださいということをやっていました。ただ、どうしても要員が足りなかったんですよね、人が足りないと。ほとんど私一人とか、2人ぐらいでやっていたので、ネットを流れる膨大な情報をキャッチするっていう場所もなければ、機材もない。放送につなげるノウハウもないっていう、ないない尽くしだったので、あの膨大な情報を全くすくうことができなかったっていう、すごい反省がありました。

  • ノウハウがないですね、連携がない、放送部門との連携不足って書いたのは、ツイッターが流れる情報っていうもの、まさにこれはシェアされた情報ですよね。「助けて」「助けて」「助けて」「助けて」っていう情報があっても、ツイッターが流れて、は?って感じなんですよね。

  • 放送部門に、こういうのがあるんだけど、それ、警察の情報ですか?消防の情報ですか?役場の情報ですか?という感じで、そんなものが放送に使えるんですか?と裏取ったんですか?というような感じです。私自身もそうで、これをそのまま放送に出していいのかな?っていうのはあります。それは今でもそうで、今は判断する基準とかルールをきちんと作っていますが、この時点では、そういうノウハウっていうのが全くなかったんですよね。その意味では、シェアされた情報というのに答える体制が、仕組みっていうのがメディアの側にできてなかったということです。

  • 災害とか、助けて!という情報を十分に生かせなかったんですよね。そうしたものを一気に解決するには、専門のチームを作らないといけないのではないかと。二度と起きてもらっては困るんですけど、首都直下地震というのはあると言われていますし、そうしたことが起きた場合に備えて、専門のチームを作る必要がある。だからSocial Listening Teamというのを立ち上げたわけです。

  • もう1つの課題っていうのは、情報のミスマッチというのがあって。あんまり聞き慣れないと思うんですけど、情報のミスマッチに対応するためです。かぶんツイッターっていうのを私、やってたんですけど、原発報道について伝えていたんですね。NHKの原発報道っていうのを毎日のようにニュースで流していました。その内容をツイートでつぶやいていました。

  • ツイートっていうのは、双方向なので、ソーシャルですから、いっぱい質問がくるわけですよね。そうすると、原発報道についてのご意見っていうのが、毎日、大量に私宛てにやってくるようになりました。よく言われたのが、「知りたい情報をマスコミが一切、伝えていない」というお叱り、ご意見です。「直ちに危険はないって、それは一体どういうことなんだ」というのから始まって、「プルトニウムが今、危険なんじゃないか」とか、「実は4号機が一番危ないんじゃないか」とか、「今、福島第一原発の原発監視カメラを見ていたら、煙が大量に上がっている。どうしたんだ」ということが、さっきの動画ではないですけど、いろんな人がいろんな知識をもとにして調べていって、想像、または推理などを膨らませていって、それが、どんどんシェアされていくと。

  • 一方で私。ツイッターをやっているのは、ほとんど私一人。あとは、従来のテレビ報道という構図だったわけですよね。私がツイートをしているそばでは、原発を担当する記者とかデスクたちが一生懸命、仕事をしてるわけですよね。

  • 隣でやってるわけですから、大体、事情は分かるんですよ。限られた人数でやってるので、取材の優先度があるから、大事なところ、一番、危機度が高いところから取材をしていくわけです。なので、そこまで手が回っていませんでしたという例が多くて、あとは、すみません、気付いていませんでしたということもあります。

  • だけど、やっぱり、こういうふうに言われちゃうわけですよね。特にNHKというのは、そういうことを言われがちなところがあります。「国営放送」とか、いまだに言われちゃうところもありますからね。NHKだけじゃなくて、ひっくるめて「マスコミは情報を隠していますね」「やっぱり情報統制ですね」「今回も大本営発表ですか」と、御用学者とか御用マスコミとか、よく言われましたけど。

  • マスコミがそう言われるだけだったら、まだしも、不安にかられて家族で引っ越しをしようと考えてみたりとか、ずっと家を出るのはやめようとか、窓を閉め切って。そのほうが健康に悪いですけれども。不安につけこもうとする動きがあったりとか、自分の政治運動に利用したりとか、何かを売りつけようとする。そうした情報被害につながるわけです。だから、これは「助けて!」っていう、「閉じ込められた、助けて!」っていうのとは、また違う。だけどもレベルは同じくらいの被害、災害につながるおそれがあるんです。情報災害ですけれども。

  • そうしたことは防がないといけないと。だから少なくとも今、シェア層の中で震災とか原発事故に対する、こうした不安とか疑問に向き合う体制が必要だろうということ、これも2つ目の理由です。偽情報に向き合うっていうのは、いろんなやり方があるんですけれども、3年前に千葉県で起きた大規模な爆発事故というのが一例ですね。

  • 直後に、こんなツイートが出回り始めたんですね。すごく小さくて見えないと思うけど。千葉で爆発事故が起きたんですよ、工場で。エバーグリーンっていう清掃関係の工場なんですけど、そこで過去に放射性セシウムを保管していましたよねと。被災地から放射性セシウムを除去っていうか、きれいにするために、いろんな廃材みたいなのが送られてきたんですね。それを保管してましたよね。それは本当ですよ。

  • それが、この爆破で飛び散ったんじゃないですか?と。それはデマなんですけど、憶測なんですよね。それはマスコミで一切報道されてませんよね。報道してませんでした、知らなかったので。また圧力ですよね。これもデマですよね。そういうふうに、デマっていうのは、えてして善意で広まるんですよね。

  • 心配だっていうので、「千葉県の皆さん、危険だから逃げて」とかね、そういう感じの善意が多いと思います。善意っていうのと、事実と憶測というのが、ちょうどいいぐらいに混ざり合ったときに拡散をするんですよね。これは取材をしないといけないなということで、事実関係を取材しました。

  • そうすると、この工場では確かに以前はセシウムってあったんだけれども、今は保管されていません。除去が終わったので、千葉県内の別のところに移管しました。それを千葉県のホームページに書いてありますよと。すごい分かりにくいところなんですけど。それが取材で分かったので、次の原稿に書いて、それを拡散させたんですよね。ソーシャルでつぶやいたりして。それによって、間違った不安とか憶測、拡散っていうのを防ぐことができたということです。

  • これ自体は、そんなに皆さんも、まず知らないだろうし、大きなことではないと思うんですけれども、こうしたことを、これからも、どんどんやっていかないといけないんですね、ソーシャル時代、シェア時代のメディアというのは。同じようなことを言ってる人がいました。アメリカにNPRっていう公共放送のラジオ局があるんですね。アンディ・カーヴィンというのがいるんですけど。この人ですね。

  • 「なにか大事件が起きたときに、私たちジャーナリストは最新のニュースヘッドラインを配信するだけではなく、自分たちが何を知っていて、何について確認が取れていないかを明確に伝えるべきである。もし、デマが拡散しているのならば、それに対して活発に対処をするべきだ。デマが流れていないようなふりをしたり、自分たちとは関係ないと公共に示すのではなく、それに対して正面から立ち向かうべきだ。市民に疑問を投げかけさせ、精査し、それがどこから、なぜ現れたものなのかを理解する必要がある。」ということなんですね。

  • つまり、今まで、これは本当に多くのメディアが今もそうだし、私たちも基本的にそうなんですけど、自分が取材をして原稿を書いて放送に出すと。自分たちが何を知ってるかってことを書くんですよね。何が確認が取れていないかっていうことは、あまりそこまでは触れようとしないんです。

  • もし、デマが拡散している。自分が出した放送とか、放送だけじゃなくて、自分が取材していないっていう分野でも、何かそれについてのデマが拡散していると。そういうのだったら、わざわざデマのために取材をして、それに対処をするべきだと。デマが流れていることを、目をつむって、耳を塞ぐのではなくて、立ち向かうっていう。それがソーシャル時代、ネット時代のシェア層に向けたジャーナリズムの役割ですということで、まさにそれはそのとおりです。

  • ただ、デマへの向き合い方って、とっても難しいですね。去年のことですけど、沿岸にイルカが打ち上がったと。だからこれは大震災の前兆なんじゃないかということが、いっぱい言われましたけど、これは立ち向かうべきなんだろうなというふうに思います。多くの方が不安に思う。そんなことはないんですよ、統計的に見ても。

  • だけれども、例えば、よく本当にあるんですけれども、芸能人について、反日とかね、中国、韓国のかたがたを侮辱するような発言というのもあるんですけど。こういった、1つのデマに対して立ち向かうと、よけい、それが炎上してしまうという。知らない人も、あの人って、あの芸能人ってそうだったのねっていうことを気付かせるきっかけにもなってしまうので、非常に難しいところです。デマにどの程度立ち向かったらいいのかどうかと。

  • だから、ソーシャル時代に取材をするっていうのは、それがソーシャルで、どの程度拡散をしているのかっていう、炎上の度合いを見極めるテクニック、それも必要だと思います。

  • もう1つ、これはデマというか、ソーシャルではないと、つかめないという、私たちのチームの非常に大事な仕事の一例なんですけど、ソルトの大学生が左のようなツイートを見つけました。京橋駅、大阪のほうの。「京橋駅前で警察が事故ってて草」。警察官が、パトカーが単独事故を起こしたんです。そこに容疑者を乗せた...後ろに容疑者が乗ってたんですよね。容疑者が乗ってて、なんで事故したのか分からないんですけど、パトカーが電柱にぶつかって、容疑者がけがをしちゃったんですよ。それがニュースになりました。ツイッターを見つけたんで、キャッチしてニュースになりました。

  • これを何で私が例にしたかっていうと、こういったことは絶対に警察は発表しないわけです。単に自動車の単独事故で一人がけがしたんだったら、警察は発表しないですよ。それと同じじゃないですかと、それと同じ理屈で、恐らく発表しないと思います。現に過去にもありました。これは滋賀県警なんですけど、パトカーが物損事故を起こしたんだけど、事故処理をせずに上司が立ち去り指示。これは相当ひどいんですけどね。こういったこともありました。

  • それから、決して当局、警察とか、役所っていうのが、発表しなくても、それをつかまないといけないっていうのがソーシャル時代なわけですね。なぜかっていうと、皆さんが、例えば、昼ごはんを食べたあとで、こういうのを見たとしましょうと。どうします?撮りますよね。「撮ります」って決めつけも、あれだけど。中には、撮ってLINEで送る、ツイートをするっていう人も結構いるんじゃないかと思うんです。私も記者だってこともありますけど、写真を撮りますわ。そんで、取材に入りますけど。

  • 京橋駅前って、まあまあな人通りがあるんで、そこで見ますよね。ツイートします。このときもツイートがいっぱいありました。それがNAVERまとめとかになって、ネットメディアが、そのうち記事にすると思いますよね。もしも、ソルトみたいなことをやってなくて、これまでどおり警察からの発表を待って原稿を書くっていうことをやっていたら、一生、気付かないわけですよ、こういうニュースに。

  • ネットの中では話題になる、シェアをされていて、ネットメディアの中だけで問題になっているということに気付かずに、警察のこうした一種の不始末ということに気付かないままでいたということにつながってしまうと。それから、これはSocial Listening Teamというのは、こうした役割というのが大きいんだろうなということを改めて思いました。

  • 「ソルトから生まれる・守るもの」とありますけど、皆さんの同級生、仲間の方も働いていますけど、新しいジャーナリストの育成というのがあります。シェア時代、ソーシャル時代に、マスコミはどういうことに立ち向かうべきだということを学ぶという役割があります。毎日「ソルト日報」というのを出してるんですけど、これはNHK内に新しい風を入れようという目的で出しています。なので、この講座が終わったあとでも、いつでもいいですけど、ここで、もしも働きたいと...アルバイトですから。働きたいという方があれば、私までご連絡をいただければいいと思います。

  • 「シェア時代の報道とは」ということを言っていきますけれども。しばらく、テレビっていうのは主流だと思います。テレビっていうのは、だんだんと役割が、ちょっとあやふやになってますけど、放送と通信っていうふうに分けていきますけど、テレビっていう、このものっていうものは、早々なくならないんだと思います。

  • ただ、そこに出しているものっていうのが、放送なのかどうかということは、これは時代によって変わってくるんじゃないかと思います。地上波、放送っていうものを流すっていうんじゃなくて、NetflixとかHuluとかAbema TVとか、そうした通信による放送というものがあると思います。

  • ただ、今やらなきゃいけないっていうのは、シェア層に刺さる放送。シェアをしてもらうためのコンテンツ作りってことですね。「ネットで感動がシェアされたチャンスを逃さないシステムが必要」って書いたのは、そうは言っても、時々「NHKスペシャル」とか「クローズアップ現代」とか、そうした20分、30分、1時間ものの「NHKスペシャル」が話題になることはあるんですよね、見た人によって。

  • この前の「介護殺人」っていう「Nスペ」がありましたけど、ものすごい重い内容で、見た人から「気がめいってきた」とか、いろいろ言われてましたけど。そうしたものが、「見た」「すごかった」「すごかった」「すごかった」っていうツイートではあるんですけど、じゃあ、私、見たいわっていうのに応えてないんですよね。「私、見たいわ」って言ったときに、ネットオンデマンドという仕組みがあって、有料のはあるんですけれども、ちょっと使いにくいっていうことと、あと、見たいわって思っても、45分、60分かけて、もう一回見るかということですね、忙しいときに。

  • よくあるのは、勝手にまとめてくれる人っていうのが、よくいます。画面のスクリーンショットを撮って、NAVERまとめみたいなことにして、そこで流れていることを字起こしをしていただいて、『きのうの「Nスペ」簡単まとめ』っていうのを、わざわざ作っていただいているんですね。それを見て、この「Nスペ」すごいなって感じで拡散される、シェアされるというのがあるんですけど、そんなの人任せにしている場合ではないと。

  • 「Nスペ」っていうのを作ったら、ウェブで3クリック以内で簡単に見られるという。しかもダイジェスト版も含めて用意をしておくという、例えばですけど。そうした取り組みっていうが、シェア時代のテレビ局っていうのに求められてるんじゃないかなって思います。

  • 先ほど、「シェア時代の報道とは」というので、ネットの動向を探る機能っていうのと、Social Listening Team。深く早く取材展開する機能。組織横断の記者チームとか、統計分析、プログラミングスキルも必要。あと、シェア層向けに発信する機能、コンテンツ制作とかショート動画というのをいろいろやったので、ちょっと見ていただこうかなと思います。

  • VRっていうのは、いろいろとやってるんですけど、こういったものです。本来、VRって一人で見るものなんですよね。皆さん、VRって体験したことあります?ヘッドセットとかって、あります?あんまりいないですか。VR元年とか言ってても、そんなには...一部のマニアぐらいのものですかね。

  • 本来はヘッドセットをかぶっていって、それを自分の世界の中に浸るっていう。これは、いま現在開催中のリオデジャネイロパラリンピックに出場している山本篤選手。陸上の世界記録を持っていた人ですね。この前、破られてしまったんですけど。走り幅跳びと短距離の方ですね。この方、金メダルが有力視されていて、メダルは確実視されている方なんですけど、その方の練習風景に密着をしたものです。

  • VRって、あまりご覧になった方が少ないと思うんですけれども、VRって何かな?っていうと、仮想、いろんな体験を共有するためのものなんですね。例えば、富士山に登ったことがない人がヘッドマウントディスプレーをかぶると、そこに富士山の光景が広がってるわけですね。

  • 家にいながら富士山に登ったような体験ができますというものとか、あとは、いろんな景色が多いですね。エジプトであったりとか、いろいろな海外の秘境とかが多いですね。あとは海の底とか。またはシリアとか、今ISISに支配されている地域、そうしたものというのもあります。

  • 「NHK VR」とひくと出てくるんですけど。仮想体験を提供するっていうのがVRの技術です。何でこれを報道に応用しようかなと思ったかなんですけれども、パラリンピックって、あんまり...とても残念なんですけど、Yahoo!のトレンドでも、けさ、銅メダルを何人か取った方がいるんですけど、それでもトレンドワードの上位に全然ないんですよね、パラリンピックって。やっぱり関心が低いなと。

  • 私もVRコンテンツの制作に乗り出したのは去年からなんですけど、パラリンピックを何とかしてVRで伝えられないかなと思ったんですね。なぜかっていうと、仮想の体験を伝えられるっていうことは、リオデジャネイロオリンピックに出場する方の思いっていうのも、体験っていうのも伝えられるんじゃないかなと。

  • 義足で100m走る人、義足で全速力で走っていってジャンプをする人の気持ちっていうのが分かるんではないのかなと。それによって、ふだんは全く知らない世界っていうものに視聴者を連れていくことができるんじゃないかなというのが、このVRというものを作ったという、VR山本篤選手というものを作った理由ですね。

  • 隣に記者がいます。記者の頭に360度カメラっていうのを着けています。(動画を見ています)自分が山本篤選手と一緒に走っているっていう体験ができるんです。後ろも見ることができるんですけどね。当たり前ですよね、速いのは。(動画を見ています)

  • 止まっちゃったかな。ちょっと環境悪いですね、電波の。

  • ちょっと、止まっちゃったかな...。残念ですね。やや重いんですよね、VRって。今は女性記者が360度のカメラを頭にかぶって、それで山本篤選手と一緒に走ったものです。

  • 「NHK VR」っていうふうに検索すると、NHK VRのサイトにつながりますので、そこで、いろんな人を見てみるということができます。今まで、作ったのは...。

  • 今まで作ったのは、福島第一原発の中に入って、その様子を伝えるVRサイトというものと、パレスチナのガザ地区とか、イスラエル、シリアとかありましたね。大河ドラマのセットっていうのもありましたね。いろいろなVRコンテンツを作っているので、ぜひNHK VRというサイトを見ていただければと思います。

  • あと、もう1つですね。きのう、AIについての話をされたと聞いたんですけど、AIの報道活用ということもしています。

  • ツイッター社が買収した会社で、データマイナー社というのがあるんですけど。データマイナー、これですね。データマイナー・フォー・ニュースというサービスがあります。

  • データマイナー・フォー・ニュースは何かというと、ツイッター社が買収したデータマイナーが、ツイッターの中に含まれている単語をAIが分析していって、それが事件事後につながるかどうかというのを判断して、それを新聞とかメディア各社に伝えるというものなんですけど、ほとんどSocial Listening Teamがやってることと同じなんですよね。

  • だから、ツイッター社が私のところにやって来て、日本でも展開をしたいと言うので、ついてはNHKさんどうですか?ということを一緒にやっているのが、この画面です。

  • これがソルトで使っているツイートデックっていう、ツイッターの中のいろいろな...上のほうに「サーバーダウン」とか「土砂崩れ」とか「突風 竜巻」というのがありますけど、そうしたワードを含むツイートが表示されています。「火事」とか「火災」とかが含まれているものがあります。

  • この中からニュースにつながるっていうのを人の目でキャッチしてるんですけど、その左にある「TopEvents+Alert」これがデータマイナー社が提供しているAIですね。AIがツイートの文脈とか、そのツイートにつけられた画像っていうもののを判断して、これはニュースだなと思ったものを伝えてるというものです。

  • 「火事」とか、「こんな所で事故?」とか、「大涌谷ついたけど、煙やばスギィ!!」とか、これは、「煙」っていうのと「やば」っていうものを拾っているわけですね。「こんな所で事故?」というのは、事故だけだといっぱいあると思うんですけど、画像から判断してるんだと思います。

  • 「イオンモール新潟南の近くで火事だ。バスにて東京へ移動中」。これも「イオンモール」とか...イオンモール自体じゃないですけど、ショッピングセンターの近くで火事ってなると、1つの騒動になる可能性があるので、早めにアラートを出したということだと思います。「火事だー!」っていう。これも「火事だ!」っていう人はいっぱいいるんですけど、画像と一緒にやってるってことから、ランクが上がったんだと思いますね。

  • 「冠水による渋滞が大変な事になっている。」「亀田のアピタの近くかな?火事だ。。。」「亀田で火事なう」。火事が多いですね。新潟駅前とか。というものが、われわれのところでやっているAIの活用っていうのは、今のところ、こういう感じですね。

  • あと、今、コンピューターが原稿を書くっていうのが最近はやってますけれども、われわれのところで昔からやっているのは、地震、津波とか災害が起きたときに、気象庁の電文を基にして、自動的に原稿を書くと。これは、かなり前からやっています。十数年前からやってます。それ以外のそれを経済的なニュースに応用したりとか、それは別にすぐできるんじゃないかなと思っています。

  • というように、シェアが世の中を動かすという時代に、シェア層に刺さる、シェア層に拡散してもらえるための報道というものを模索しているわけですね。最後になりますけれども、こうした時代におけるメディアの役割っていうのは、いつも言っているんですが、3つあります。確度と深度と強度ですね。確度っていうのは正確さです。ネットにあるいろんな情報の中で、メディアがちゃんと取材して、「これは本当ですよ」「これは、うそですよ」っていう正確さというものを判断するという確度です。

  • それから深度っていうのは、より深いところまでいくということですね。上っ面な、人が言っていることをそのまま伝えるっていうんじゃなくて、その背景のところまで取材をしていって、より深く取材をするという。ちょっとしたこと、「相対的貧困」ということは、ウィキキペディアを見れば出てくるわけですね。それは小学生でもそうです。それをもっともっと深くやらないといけない。みんなが集合知で書いたものがネットに出回っていますから、記者がそれを基にして書いてもしょうがなくて、それよりも上回る深さが必要だということです。

  • 3つ目の強度っていうのは、より強いものに向かっていく取材だということですね。より多くの人というのが、市民メディア、市民記者、スマホを持ってますから、例えば、周りで起きている事件・事故、その人たちは写真を撮ったりもして、つぶやいて、こんなことが起きてますよっていうことは誰でもやると思います。

  • ただ、大事件・大事故が起きている、もっと、その先にまで突っ込む。あまり危険なことはできないんですけどね。物理的に危ない、ちょっとここは冒険のようなところですね。

  • アマゾンの奥深くに行ったりとか、最高峰の山に登ったり。物理的な危ない危険が伴う所というのに行くっていうのもそうだし、あとは、なかなか普通の人が会えない人、暴力を持っている人、または、権力を持っている人...という層、人たち、集団にも立ち向かっていく、その課題というものを取材をしていく強いメディアというものが、今こそ求められている時代だと思います。

  • それから、メディア企業に必要なものは、大量のデータというものを迅速収集・分析・提供できるという。大量のデータにはソーシャルデータもあります。それから、確度と深度と強度につながる、選択と集中ですね。昔みたいな、警察署にずっといるとか、役所にずっといるとか、そういうのではなくて、一般的なそういう事件・事故の発生とかいうものは、自動で取れるものは取れるし、ツイッターを監視していればいいというのは、その集団に任せればいい。

  • それよりも記者というのは人数が限られているわけですから、確度と深度と強度につながる選択と集中というのが必要なんではないかというふうに思っています。というところで、大体、きょうのお話をしたいことは以上でございます。

  • 皆さん、メディアアンケートって紙は、いっています?帰るまでに、それを書いて、それは出していただければと。私たちの貴重な、あすへの手がかりにしたいと思いますので、よろしくお願いします。【湯淺】足立さんのお話は今まで3〜4回くらいお聞きしてるんですけど、きょうはシェア時代のことっていうのを非常に分かりやすくまとめられて、大変参考になりました。「シェア・エコノミー」っていうことばがあるように、今「シェア」ってことばがキーワードですよね。シェア経済。シェア時代の報道っていうのは、シェアネットワーク、これを使わない手はないっていうのは、今までメディアの方たちっていうのは、報道では自社の独自の取材網があったわけですけれども、その取材網だけに頼っていられる時代ではなくなってきたと。事件っていうのは、どこで起こるか分からないわけですよね。だから、そういう意味では、第一報というのは、あなたたち個人が発信する場合が多くなる。それは、ソーシャルメディアというシェアネットワークの中で拡散していく。ただ、デマだとかいったものもあるので、そこをどうやってフィルターをかけて、そのフィルターを通して、実際の報道に生かしていくかという新たな次元に...今、実際にそっちに移行してきているわけですけれども。そんなようなお話。VRの話もありましたけど。じゃあ、皆さんのほうから。

  • (会場)お話、ありがとうございました。NHKさんは、いろいろと批判を受けていることが多いと思うんですけれども。例えば、さっきおっしゃってたこととか...そういう話を受けて、ご自身って、どういうところを直していかなければならないか。あるいは、こういうことを言っているのは、おかしいんじゃないかと思っているのか、どちらなのか伺いたいんですけれども。具体的に言ってもらえると助かりますね。1つの組織って、1万人ぐらいいる組織だと、決して一枚岩じゃないわけですよ。あと、それぐらいの規模の組織だと、いっぱいいろんな事があるわけです。大体、大企業って多かれ少なかれ問題があるわけですよね。もちろんNHKにも、私が見ている中で細かいことから大きな事まで、こうしたほうがいいかなと思うこともあるし、一方で大好きなところもあります。すげえなっていう人がいっぱいですしね。だから、いっぱい多すぎて分からないっていう。やっぱり「シン・ゴジラ」みたいなところありますよ。いっぱい会議ばっかりやっているとか、縦割りがあって、紙をいっぱい使うとか、何かするたびに会議とか、根回しをしたりとか、そういうところの大企業病みたいなところはありますよ。

  • ただ一方で、私がやっているチームは小回りが利いてて、スピーディーに、わりと先んじたことはできているなっていう感じもするしね。やっぱり人どうしのつながりって大事だなっていう感じはありますね。危機感を持った人たちのつながりをやっていけば、組織というのは変えられるなというふうに思っています。組織全体が何かの意向を受けて、国の意向を受けて動くなんていうことは全くないわけですよ。だから、よく言われているようなことっていうのは、違うところもあるし、そうだなと思うところもある。中にいると、よく分かるなということもあると思います。

  • だいぶ、楽になるなと思っていますね。常に私が言ってるのは、AIによって、記者の仕事がなくなるとかね、職を奪われるっていうことが、結構よくクローズアップされるんですけど、そういう文脈っていうよりかは、人が楽をするための技術であろうと。だから、今でもむだな仕事っていっぱいあるんですよ、記者の仕事って。

  • 1つは、電話をするっていうね。警戒電話っていうんですけど。何時間に1回おきか、警察に電話するんですね。「なんか起きていませんか?」って。夜中に1回、明け方に1回とか、5時とか6時とか、7時とかニュースの前に電話をするんですよね。むだだろうと、今どき。電話したって、本当のこと言っているかどうかって分からないっていうのもあるし、ツイッターとかで取るっていう装置もあるし、また、今、公共機関がメールとかサイトに出してるんですよね。それを巡回していってクローリングをして、通知をするっていうシステムを作ればいいっていう、それも一種のAIですね、プログラミングの。そういうことによって、労力を省いて、もっと充実した取材につなげることができます。

  • だから、今までむだなことをやっていたっていうことを洗い出して、それをAIにしていこうということだと思います。AIが人間に取って代わるか代わらないかっていう議論は、とてもSF的な感じで、そんなことはないというと、そんなことはあるという論争になっちゃうんですけど、あるかないかっていうよりかは、もっといいものを出せていければ、それでいいじゃないかということだと思いますね。

  • 【湯淺】私もAIというのは非常に注目してて、今、足立さんがおっしゃったように、マイナス的な形で、よく書かれる。人間の仕事を奪われると。だけど考えてみれば、洗濯機ができて、家事が楽になって、主婦の仕事が軽減されて余暇時間が増えると。で消費につながるというようなかたちで、人工知能っていうのは使いようですよね。ただ、人工知能によって、旧来の仕事の中で忙しい、忙しい、仕事で...っていう、実際にちゃんとした仕事をやってたの?っていうところが、一方では問われてくると思うんですよね。

  • 【湯淺】だから、すべてが人間を超えることがないと思うし、そういう意見もあるんですけどね。シンギュラリティーと言って、人間の頭脳を超えてるんだと。僕はSFとしてはおもしろいかもしれないけども、実際はそれはないだろうなというかたちで。とにかく、AIっていうものを若い人たちも、それにぶち当たらざるを得ないわけですね。

  • 【湯淺】だから、分業ですよね。むだなところをAIに任せると。自分たちは、もっと高度な、頭脳的な作業をやっていくっていうことで、そのすみ分けみたいなものが、今後やはり出てくると思います。時間も、もうそろそろ...。

  • 【湯淺】また、これをきっかけに足立さんと...先ほどのアンケートを皆さん書いていただいてて、どういうことに関心をお持ちなのか。本日は「ソーシャル時代のテレビ報道」ということで、シェア時代のテレビ放送というものをお話いただいて。皆さん、改めて盛大な拍手を。